カレン・デミルチャン・コンプレックス Karen Demirchyan Complex
アルメニアの首都エレバン西部、ツィツェルナカベルドの丘に建つ大規模複合施設。コンサートホールとスポーツアリーナを収め、翼を広げた鳥を思わせる造形でソビエト・モダニズムの代表例とされる。
§1 — 概要概要
カレン・デミルチャン・コンプレックス(Karen Demirchyan Complex)は、アルメニアの首都エレバン西部、ツィツェルナカベルドの丘に建つ大規模な多目的複合施設である。ラズダン川の渓谷を見下ろす高台に位置し、コンサートホールとスポーツアリーナを中核に、大ホワイエや会議場を備える。ソビエト期アルメニアを代表するモダニズム建築の一つに数えられる。
歴史
1983年に開館したが、その一年半後の1985年に火災で閉鎖され、改修を経て1987年に再開した。設計はアルトゥール・タルハニャンを中心に、ハチキャン、ポゴシャン、ムシェギャンらアルメニア人建築家の共同による。1999年、議会銃撃事件で命を落とした元国会議長カレン・デミルチャンの名が冠された。彼はソビエト期に本施設の建設と改修へ深く関与した人物である。2005年に民営化され、約4200万ドルを投じた大規模改修ののち、初開館から25年を経た2008年に再び開館式典が催された。
建築的特徴
外観は翼を広げた巨大な鳥を思わせる造形で、丘の地形に沿って力強い水平線を描く。鉄筋コンクリートによる大スパンの屋根はシェル構造の発想を取り入れ、内部に柱のない広大な空間を生む。丘の麓から建物へは184段の階段が導き、記念碑的な接近を演出する。装飾を抑え、構造そのものを造形の言語とする手法は、ソ連邦下で展開した地域的モダニズムの特質をよく示している。
意義・現在
本施設はエレバンの都市景観を象徴する存在であり、国際チェス・オリンピアードをはじめ各種の競技会・公演の舞台となってきた。2014年には所有がアルメニア国防省へ移管された。ソビエト・モダニズムの記念碑として、また独立後アルメニアの文化的象徴として、今日も大規模な催事を担う現役の施設である。