ロンドンのリージェンツ・パーク北縁に建つ英国を代表するモスク。フレデリック・ギバードの設計により1974年に着工、1977年に竣工し、金色のドームとミナレットでロンドンの景観に加わった近代モスク建築である。
§1 — 概要概要
ロンドン・セントラルモスク(London Central Mosque)は、ロンドン中心部、リージェンツ・パークの西縁に建つ礼拝施設である。リージェンツ・パーク・モスクの通称でも知られ、隣接するイスラミック・カルチュラル・センター(ICC)と一体をなす。英国の建築家フレデリック・ギバード(Frederick Gibberd)の設計になり、金色に輝くドームと白い尖塔(ミナレット)が公園越しに望まれる。主礼拝室は5,000人を超える礼拝者を収容し、英国ムスリム社会の宗教・教育・文化活動の中心として機能してきた。
歴史
ロンドンに中央モスクを設けようとする運動は20世紀初頭に始まる。1944年、英国政府はリージェンツ・パークに隣接する敷地を提供し、ジョージ6世によってイスラミック・カルチュラル・センターが開設された。これはカイロに英国国教会の聖堂を建てる用地の提供に対する返礼でもあった。恒久的なモスクの設計は1968年に国際設計競技にかけられ、52案のなかからギバード案が選ばれた。サウジアラビアのファイサル国王をはじめ各国の寄付を得て1974年に着工し、1977年に竣工して同年7月に開堂した。総工費は約650万ポンドに及んだ。
建築的特徴
鉄筋コンクリート造に磨いたポートランド・ストーンを張り、金銅板で覆われたドームを戴く。設計は近代建築の簡潔な構成を基調としつつ、ドーム・ミナレット・幾何学装飾といったイスラーム建築の要素を取り入れた折衷的なものである。主礼拝室は、ミナレットを伴う三層の翼部と組み合わされ、内部は装飾を抑えた広やかな空間とされる。ドーム内面はアラベスクや聖なる幾何学文様で覆われ、基部には16条の星をあしらったトルコ石色のステンドグラスがめぐる。家具をほとんど置かず、シャンデリアと大絨毯が空間を引き締める。
意義・現在
本モスクは、戦後英国における移民社会の定着と、公的な信仰空間の確立を象徴する建築である。近代建築の語彙でイスラームの礼拝空間を翻訳した試みとして評価され、ロンドンの都市景観に金色のドームという新たな焦点を加えた。2018年には建築的・歴史的価値が認められ、グレードII*の指定建造物に登録された。現在も五度の礼拝、金曜の集団礼拝、教育講座などが営まれ、英国ムスリム社会の中核であり続けている。