ロンドン・パラディウム London Palladium
ロンドン中心部ウェストミンスター、アーガイル街に建つ劇場。劇場建築の名手フランク・マッチャムが設計し、1910年に開場した。豪奢な内装をもつヴァラエティ劇場の代表例で、英国でもっとも愛される舞台のひとつに数えられる。
§1 — 概要概要
ロンドン・パラディウム(London Palladium)は、ロンドン中心部ウェストミンスター区のアーガイル街に建つ劇場である。劇場建築の名手として知られるフランク・マッチャムが設計し、1910年12月26日(ボクシング・デー)に開場した。約2,300席を擁する大規模なヴァラエティ劇場として知られ、王室主催の慈善公演ロイヤル・ヴァラエティ・パフォーマンスの常設会場、また数々の歌手・喜劇人が立った舞台として、英国でもっとも親しまれた劇場のひとつである。
歴史
この場所には1867年に「コリンシアン・バザール」が設けられ、のちにヘングラーのサーカス、さらにスケート場「ナショナル・スケーティング・パレス」へと姿を変えてきた。1909年に興行主ウォルター・ギボンズらがこの土地の権利を取得し、ロンドン・ヒッポドロームやコロシアムに対抗する豪奢な劇場の建設をマッチャムに託す。1910年、旧建物の大部分を取り壊しつつも19世紀の堂々たるファサードを残す形で新劇場が建てられ、同年のボクシング・デーにヴァラエティ公演で幕を開けた。以後、1955年から1969年までテレビ番組『サンデー・ナイト・アット・ザ・ロンドン・パラディウム』の舞台となり、1963年にはビートルズが出演して「ビートルマニア」の語を生むなど、大衆芸能の殿堂として歩んだ。
建築的特徴
通りに面したファサードは、先行する「コリンシアン・バザール」から受け継いだ古典神殿風の正面で、高い台座に載るコリント式の列柱が特徴をなす。マッチャムはこれを改修し、彫刻を加えて劇場の顔へと仕立て直した。内部は白と金を基調とする華麗な意匠で、ロココ調の装飾、大理石、深紅の客席が贅を尽くした空間を生む。客席は平土間と二層のバルコニーからなり、舞台を縁取るプロセニアム・アーチが視線を集める。マッチャムはあらゆる席から舞台がよく見えるよう配慮し、規模の大きさにもかかわらず親密な一体感をもつ場をつくりあげた。
意義・現在
ロンドン・パラディウムは、第一次世界大戦前の十年に西ロンドンへ相次いで建てられた大型ヴァラエティ劇場のなかでも、もっとも複雑な建設史をもつ一例である。先行建築のファサードを巧みに取り込んで劇場の正面に転じた手腕は、マッチャム後期の代表作にふさわしい。エドワード朝の劇場建築の精華として英国の第二級(II*)指定建築物に登録され、開場から一世紀を超えた現在も、現役の劇場として活況を保っている。