パリ、ルーヴル宮殿の中庭に建つガラスと鋼のピラミッド。I・M・ペイが大ルーヴル計画の主入口として設計し、1989年に完成した。古代の幾何学を装飾なき現代の構法で再構築している。
§1 — 概要概要
ルーヴル・ピラミッド(Pyramide du Louvre)は、パリのルーヴル美術館(ルーヴル宮殿)の中庭ナポレオン広場に建つ、ガラスと鋼でできた高さ約21.6メートルのピラミッドである。中国系アメリカ人建築家イオ・ミン・ペイ(I・M・ペイ)の設計で、美術館の主入口を兼ねるとともに、地下の集合ホールへ光を導く天窓として機能する。本体の周囲には同じ意匠の小ピラミッドが三つ配され、採光井の役割を担う。
歴史
1981年、フランス大統領フランソワ・ミッテランが「大ルーヴル計画(Grand Louvre)」を打ち出し、手狭で動線の錯綜していた美術館の抜本的な再編が始まった。1983年にペイが設計者に選ばれ、翌年にかけて広場の中央へ新たな主入口を据える案が示された。建設はその後進められ、1989年に完成・公開された。透明なピラミッドを歴史的宮殿の中心に置く構想は当初から賛否を呼んだが、開館後は次第に受け入れられ、今日ではパリを象徴する光景の一つとなっている。
建築的特徴
ピラミッドは、603枚の菱形と70枚の三角形のガラス板を、細い鋼材によるスペースフレームで支える構造をとる。底辺はおよそ35メートル四方、側面の傾きは約51.5度で、これはギザの大ピラミッドにきわめて近い角度である。古代エジプトに由来する純粋な幾何学形を、装飾を排した透明な現代の構法で再構築した点に本作の核心がある。日中は外光を地下へ落とし、夜は内側から発光して、重厚な石造の宮殿と軽やかなガラスの対比を際立たせる。
意義・現在
ルーヴル・ピラミッドは、歴史的建造物に現代建築を接続する手法をめぐる議論の象徴となった作品である。当初の批判を超えて、地下動線の整備により美術館の機能を大きく改善し、来館者を迎える顔として定着した。古典と現代、石とガラス、不透明と透明という対立を一つの形にまとめあげた点で、20世紀末を代表する増改築の事例として広く参照されている。
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