米オハイオ州クリーブランド、エリー湖畔に建つロック音楽の殿堂・博物館。ルーヴルのピラミッドで知られるI・M・ペイが設計し、1995年に開館した。ガラスのテントと塔が湖面に映える幾何学的造形で名高い。
§1 — 概要概要
ロックの殿堂(Rock and Roll Hall of Fame)は、米オハイオ州クリーブランドのエリー湖畔に建つ、ロックンロールの歴史を顕彰・記録する殿堂兼博物館である。1983年に設立された財団が長い誘致合戦の末にクリーブランドを本拠地に選び、ルーヴル美術館の増築で名高いI・M・ペイ(イオ・ミン・ペイ)に設計を委ねた。1995年の開館以来、ジャンルの記憶を集約する場として世界中のファンを集めている。
歴史
財団は1983年、アトランティック・レコードのアーメット・アーティガンらによって設立され、1986年から殿堂入りの選出を始めた。本拠地は当初定まらず、複数の都市が誘致を競ったが、「ロックンロール」という語を広めたディスクジョッキー、アラン・フリードゆかりの地であることなどを背景に、1986年クリーブランドが選ばれた。建設地は二転三転し、最終的に湖畔のノース・コースト・ハーバーに決まる。1993年6月7日に着工し、1995年9月1日に開館。ピート・タウンゼンドやチャック・ベリーらが式典に列席した。
建築的特徴
ペイは「ロックンロールのエネルギーを反映する」ことを意図し、大胆な幾何学的造形でこれに応えた。中核をなすのは、地上から立ち上がる白い塔と、そこに寄りかかるように突き出すガラス張りのテント(二つの三角形からなるピラミッド)である。このガラス面はパリのルーヴルで彼が手がけたピラミッドを想起させる。塔は当初200フィート(約61メートル)を予定したが、近接するバーク・レイクフロント空港への配慮から162フィート(約49メートル)に抑えられた。内部はカンチレバーで湖上へ張り出す展示棟や、来館者が階段・橋・エスカレーターを上下に行き交う吹き抜けのアトリウムなど、動きに満ちた空間が連続する。ガラスのカーテンウォールが湖と空を内部へ取り込む。
意義・現在
ロックの殿堂は、ポピュラー音楽という大衆文化を記念碑的建築として正面から扱った先駆的な事例である。ペイ自身はロック音楽に必ずしも通じてはいなかったが、その造形は20世紀後半を象徴する音楽の躍動を抽象化したものとして受け止められた。展示は殿堂入りした演奏家にとどまらず、ロックの歴史全体を対象とする。エリー湖畔のランドマークとして、クリーブランドのウォーターフロント再生の核となり、現在も多くの来館者を迎えている。