ワシントンD.C.のナショナル・モールに立つ高さ約169メートルの大理石オベリスク。初代大統領ジョージ・ワシントンを記念して1848年に着工し、資金難と南北戦争による長い中断を挟んで1884年に完成した。
§1 — 概要概要
ワシントン記念塔は、ワシントンD.C.のナショナル・モールに立つ石造のオベリスクである。初代大統領ジョージ・ワシントンを記念して建てられた。高さは2013年から2014年の測量で169.046メートル。外装は白大理石、内部の躯体は花崗岩、基礎は片麻岩による中空の塔で、1884年の完成から1889年のエッフェル塔竣工まで、世界で最も高い建造物であった。石造としては現在も世界最高である。
歴史
記念建造物の議論はワシントンの死(1799年)の直後に始まったが、党派対立と資金難によって長く進まなかった。1833年に民間のワシントン記念協会が設立され、1836年の設計競技を経て1845年にロバート・ミルズの案が正式に採用される。ミルズ案は、直径76メートルの円形の列柱廊(コロネード)建築が方尖塔を囲み、全高180メートルに達するというものであった。しかし建設費が見積もりを大きく超えることが判明し、1848年、協会は柱廊を省いて方尖塔のみを建てる方針に改める。同年7月4日に定礎、翌年から壁体の積み上げが始まったが、資金は尽き、協会の主導権をめぐる争いと南北戦争が重なって1854年から工事は止まった。再開は1879年、連邦政府が事業を引き継ぎ、陸軍工兵隊のトマス・リンカーン・ケイシー中佐が指揮を執ってからである。ケイシーは基礎を全面的に補強し、塔身の比例を古代エジプトの方尖塔に近い形へ整え直した。1884年12月6日に頂部のアルミニウム製尖端が据えられて石積みは完成し、1885年2月21日に献堂式、内部の鉄骨階段などを終えた1888年10月9日に一般公開された。
建築的特徴
塔身は上へ向けてわずかに絞られ、その上に高さ16.8メートルのピラミディオンが載る。壁厚は基部で約4.6メートル、頂部付近では50センチメートルに満たない。内部は中空で、壁沿いに鉄製の階段が螺旋を描き、中央を昇降機が通る。石材は工事の中断によって調達先が三度変わっており、地上約46メートルの高さで大理石の色調が明らかに変わる。中断の記録が、そのまま外観に縞となって残っているわけである。頂点に据えられたアルミニウム製の尖端は避雷針を兼ね、鋳造当時のアルミニウムは銀に近い価格であったため、単体の鋳物としては当時最大の貴重品であった。内壁には、各州や団体、外国から寄せられた記念石が多数はめ込まれている。装飾らしい装飾はほとんどなく、幾何学的な塊としての存在感だけで成り立つ。
意義・現在
19世紀のアメリカは、共和国の記念碑にどの様式を与えるかを繰り返し問うた。神殿形式は特定の宗派や古代の王権を想起させ、彫像は個人崇拝に傾く。エジプト・リヴァイヴァルの方尖塔が選ばれた背景には、そうした含意から距離を取りつつ、垂直性だけで記念性を確保できるという判断があった。結果として、柱廊を失ったことで生じた無装飾の巨大な塊は、19世紀の折衷的な記念建築のなかでは異例なほど抽象的な形となり、後の記念碑や高層建築の造形にも通じる。2011年のヴァージニア地震で石材に亀裂が生じて2014年まで閉鎖され、2016年から2019年にかけても昇降機の更新などのため再び閉鎖された。国家歴史登録財に登録され、国立公園局が管理している。