テヘラン中心部に建つパフラヴィー朝の旧王宮。白大理石の外装と、イスファハーンのシェイク・ロトフォッラー・モスクに倣ったドームをいただき、東西の意匠を折衷した1930年代イランの記念碑である。現在はイラン美術館。
§1 — 概要概要
大理石宮殿(マルマル宮殿、کاخ مرمر)は、イランの首都テヘランの中心部に立つパフラヴィー朝期の旧王宮である。白い大理石で覆われた外装と、イスファハーンのシェイク・ロトフォッラー・モスクのドームを範とした円蓋を特徴とし、東西の建築意匠を一棟に折衷している。
歴史
レザー・シャー・パフラヴィーの命により、1934年から1937年にかけて建設された。当初は息子モハンマド・レザーの私邸として着工されたが、のちに王朝へ贈られ、レザー・シャーの執務と冬の住まいとなった。ドームのタイルではクリーム色の地釉がなかなか得られず、金を含む配合を工夫した名工によって解決されたと伝えられる。1939年にはモハンマド・レザーとファウジーア妃の婚礼がここで営まれた。1941年に同所で退位文書へ署名するまで、王家はこの宮殿に暮らした。設計の帰属には諸説があり、アルメニア系のレヴォン・タドシアンの名やフランス人技師の関与が伝えられる一方、ドームや内装は伝統建築家ホセイン・ロルザーデが手がけたとされ、多くの資料は彼を主たる建築家として挙げる。革命後は各種の国家機関に用いられ、2020年に修復を経てイラン美術館として一般公開された。
建築的特徴
外壁を白大理石で包んだ二階建てで、入口にはアケメネス朝の兵士像を配するなど、ペルシアの古層を引く意匠が随所に見られる。最大の見せ場は、シェイク・ロトフォッラー・モスクに倣ったアラベスク文様のドームである。内部には「鏡の間」と呼ばれる大広間があり、モスクや聖廟と同じ鏡象嵌(アーイーネ・カーリー)で全面を覆う。カージャール朝以来の伝統と西洋の宮殿建築を併せ持つ、折衷主義的な構成が貫かれている。
意義・現在
大理石宮殿は、近代化を進めたパフラヴィー朝が、伝統的な工芸と西洋的な様式を国家の表象として束ねようとした記念碑である。タイル・鏡象嵌・木彫など各地の名工の技が結集した点でも、20世紀イランの工芸建築の到達を示す。イラン国定遺産に登録され、現在は美術館として往時の室内とともに公開されている。
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