アメリカ・ウィスコンシン州ミシガン湖畔に建つ美術館。サーリネンの戦争記念館(1957年)に始まる複合施設で、2001年にカラトラバが設計した、可動の翼をもつクアドラッチ・パビリオンで世界的に知られる。
§1 — 概要概要
ミルウォーキー美術館(Milwaukee Art Museum)は、アメリカ・ウィスコンシン州ミルウォーキーの、ミシガン湖を望む湖畔に建つ美術館である。3人の著名な建築家が異なる時代に手がけた3棟からなる複合施設で、とりわけ2001年にサンティアゴ・カラトラバが設計したクアドラッチ・パビリオンは、鳥の翼のように開閉する可動の日除け「バーク・ブリーズ・ソレイユ」で世界的に知られる。その姿は湖畔の新たな象徴となり、現代建築の代表作の一つに数えられる。
歴史
美術館の母体は、1888年に設立されたレイトン美術館とミルウォーキー美術協会である。1957年、両者の収蔵品は、フィンランド出身の建築家エーロ・サーリネンが設計したミルウォーキー郡戦争記念館に統合され、美術館としての歩みが始まった。1975年にはデイヴィッド・カラーによる増築棟(カラー館)が加わり、増大する収蔵品を収めた。1980年に現在の「ミルウォーキー美術館」へと改称される。そして1997年に着工し、2001年に開館したのが、カラトラバによるクアドラッチ・パビリオンである。これはカラトラバにとってアメリカでの最初の建築であり、ミルウォーキーの都市像を一変させた。
建築的特徴
サーリネンの戦争記念館は、中央の基部から翼を張り出す十字形の力強いモダニズム建築である。続くカラー館は、打放しコンクリートによるブルータリズムの増築であった。これらに対し、カラトラバのクアドラッチ・パビリオンは、白く軽やかな造形で鮮やかな対照をなす。中心には、高さ約27メートルのガラス天井をもつ大広間「ウィンドホーバー・ホール」があり、ゴシックの聖堂を思わせる空間が湖に向かって開く。屋上に載る「バーク・ブリーズ・ソレイユ」は、全長約66メートルに及ぶ72枚の鋼の羽根からなり、風や採光に応じて開閉する。風速が一定を超えると自動で閉じる仕組みで、技術と造形を融合させたカラトラバの真骨頂を示す。湖へ伸びる吊橋「ライマン橋」も、帆船を思わせる傾いたマストで全体の構成を引き締めている。
意義・現在
クアドラッチ・パビリオンは、スペインの建築家・技師カラトラバの名を国際的に高めた作品であり、2001年には『タイム』誌に同年の最優秀デザインとして選ばれた。3棟は、戦後モダニズムからブルータリズム、そして21世紀の動く建築へと、20世紀後半以降の建築の流れを一つの敷地で見せる。2015年には湖側に新たな入口「イースト・エンド」が加えられ、サーリネンとカラー両棟の改修もあわせて行われた。現在もミシガン湖畔を代表する建築として、多くの来館者を迎えている。
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