ノルウェーの町ブルムンダールに立つ、高さ約85メートル・18階建ての木造高層建築。2019年完成。直交集成板(CLT)や集成材を主要構造材とし、木造でも高層が可能であることを実証した、脱炭素時代の象徴。
§1 — 概要概要
ミョーストーネット(Mjøstårnet)は、ノルウェー南部の小さな町ブルムンダールに立つ、18階建て・高さ約85メートルの木造高層建築である。ヴォル・アルキテクトの設計により、2019年に完成した。木材を主要な構造材として、これほどの高さの建物を実現した先駆的な作品であり、脱炭素時代の建築の可能性を象徴する。
歴史
ミョーサ湖のほとりに建つこの塔は、地元の林業と木材産業の力を世界に示す目的もあって計画された。住宅、ホテル、オフィス、レストランが入る複合用途の建物で、完成した2019年当時は、世界でも最も高い木造建築の一つとして大きな注目を集めた。その後、より高い木造高層がアメリカなどで次々と建てられており、木造高層をめぐる挑戦と普及は、いまも世界各地で続いている。
建築的特徴
建物の骨組みは、地元産の木材から作られた集成材(グルーラム)の大きな柱と梁、そして床に用いたCLT(直交集成板)でできている。木は鉄やコンクリートに比べて軽く、加工しやすく、そして何より、森が大気から吸収した炭素を建物のなかに固定し続ける。火災への懸念に対しては、木の表面が燃えて炭となり内部を守るという木材の性質と、徹底した試験によって、安全性が確かめられた。
意義・現在
ミョーストーネットは、木が高層建築の主役になりうることを、実際の建物で証明した記念碑である。製造時に多くの炭素を出す鉄やコンクリートに代えて、炭素を蓄える木を使うこの試みは、気候危機に向き合う21世紀の建築の、一つの希望を示している。森林資源の持続的な管理とともに、その意義は今後さらに重みを増していくだろう。