モーリッツブルク城 Moritzburg Castle
ドイツ・ザクセン州、ドレスデン近郊の池に浮かぶように建つバロックの離宮。16世紀の狩猟館を起源とし、18世紀にアウグスト強王のため建築家マテウス・ダニエル・ペッペルマンが改築した。四隅に円塔を備えた左右対称の姿で知られる。
§1 — 概要概要
モーリッツブルク城(Schloss Moritzburg)は、ドイツ・ザクセン州、ドレスデンの北西に位置するバロック様式の離宮である。城という名をもつが、防御のための要塞ではなく、狩猟と祝祭のために営まれた華麗な遊楽の館(ルストシュロス)である。人工の池に築かれた方形の島の上に建ち、四隅に円塔をもつ左右対称の姿が、水面に映る景観とともに知られている。
歴史
起源は16世紀にさかのぼる。ザクセン公モーリッツのため、1542年から狩猟用の館が建てられ、その名にちなんでモーリッツブルクと呼ばれた。当初はルネサンス様式の比較的簡素な建物で、17世紀には礼拝堂が増築された。現在見る壮麗な姿になったのは18世紀である。ザクセン選帝侯にしてポーランド王を兼ねたアウグスト強王が、狩猟の拠点をふさわしい規模へ改めることを望み、宮廷建築家マテウス・ダニエル・ペッペルマン(Matthäus Daniel Pöppelmann)に改築を委ねた。工事は1723年から1733年にかけて進められ、古い館を包み込むようにバロックの量塊が築かれた。アウグスト強王が1733年に没した時点で計画の一部は未完のまま残されたが、四つの円塔をもつ堂々たる外観はこのとき定まった。
建築的特徴
建物は赤と黄を基調とした明るい外壁をもち、四隅にそびえる丸い塔が水平に伸びる本体を引き締める。池の中の島に据えられたことで、館はどの方角から見ても水鏡に映え、橋を渡って近づく者に祝祭的な眺めを与える。内部にはアウグスト強王が蒐集した狩猟の戦利品である鹿角の大コレクションが飾られ、なかでも色鮮やかな鳥の羽根で壁面を覆った「羽根の間」(フェーダーツィマー)は、宮廷の奢侈を伝える室内として名高い。建築・庭園・水面を一体に構成し、自然のなかに人工の幾何学を据える手法は、ペッペルマンが手がけたドレスデンのバロックに通じる。
意義・現在
モーリッツブルク城は、ザクセン選帝侯家の権勢と、狩猟という宮廷文化が結晶した建築である。第二次世界大戦末期には、版画家ケーテ・コルヴィッツが最晩年を過ごし、この地で世を去ったことでも知られる。今日では博物館として公開され、バロックの居室や羽根の間、狩猟コレクションを見ることができる。冬には、ここで撮影された映画にちなむ催しも開かれ、ザクセンを代表する観光地の一つとなっている。建物はザクセン州の文化財として保護されている。