ドレスデンにあるドイツ・バロックの宮廷建築群。アウグスト強王の祝祭広場として1709年に着工し、ペッペルマンが列柱と楼閣で中庭を囲む構成を生んだ。彫刻に覆われた華麗な造形で知られ、現在は名画館などの美術館を収める。
§1 — 概要概要
ツヴィンガー宮殿(Zwinger)は、ドイツ東部の都市ドレスデンにあるバロックの宮廷建築群である。ザクセン選帝侯にしてポーランド王を兼ねたアウグスト強王の治世に、祝祭とオランジェリーのための場として築かれた。設計はザクセンの宮廷建築家マテウス・ダニエル・ペッペルマンが手がけ、彫刻家バルタザール・ペルモーザーが豊麗な装飾を加えた。ドイツ・バロックを代表する記念碑のひとつであり、現在は名画館をはじめとする美術館群を収める。
歴史
建設は1709年、選帝侯の戴冠や婚礼を彩る祝祭広場として始まった。ペッペルマンはローマやウィーン、パリの建築を学んだ知見をもとに、開かれた中庭を列柱と楼閣(パヴィリオン)で囲む構成を立案した。当初これは、エルベ川に向けて新たに建てる宮殿の前庭として構想されたが、アウグスト強王の没後に宮殿計画は放棄され、エルベ側は壁で仮に閉じられたまま残された。
一世紀後の1847年から1855年にかけて、建築家ゴットフリート・ゼンパーがエルベ川側に絵画館(ゼンパー・ギャラリー)を加え、未完のまま残されていた一辺を閉じた。これによりツヴィンガーは美術館複合体としての性格を強めた。1945年2月のドレスデン爆撃で建物群は壊滅的な被害を受けたが、1950年代から60年代にかけて再建され、往時の姿を取り戻した。
建築的特徴
ツヴィンガーは、内部に大きな空間をもつ単一の建物ではなく、中庭を取り囲む回廊と楼閣の集合体である。低いオランジェリーの翼が方形の広場を縁取り、四隅と軸線上に華やかなパヴィリオンが据えられる。なかでも王冠を戴く門「クローネントーア」と、曲面を描くファサードに彫刻があふれる「壁面パヴィリオン(ヴァルパヴィリオン)」は、バロックの劇的な造形をよく示す。ペルモーザーによる砂岩の彫像やカルトゥーシュが手すりや破風を埋め、建築と彫刻が一体となって動きのある量塊を作り出す。石材は地元産の砂岩で、彫刻の柔らかな陰影を引き立てている。
意義・現在
ツヴィンガーは、宮廷文化の華やぎを今に伝えるバロック建築の到達点として知られる。第二次世界大戦の破壊からの再建は、戦後ドレスデン復興の象徴ともなった。現在はアルテ・マイスター絵画館、ドレスデン磁器コレクション、数学・物理サロンの三館を擁し、ザクセン州の重要文化財として保護されている。中庭は無料で開放され、噴水と庭園を巡る市民や観光客でにぎわう。