ニューヨーク、マンハッタンに建つ近代美術館。1939年にグッドウィンとストーンが国際様式で建てた本館を核に、フィリップ・ジョンソンや谷口吉生らの増改築を重ねてきた。20世紀美術の殿堂であり、近代建築の歩みそのものを体現する建物である。
§1 — 概要概要
ニューヨーク近代美術館(Museum of Modern Art、通称MoMA)は、マンハッタンの西53丁目に建つ、世界有数の近代・現代美術館である。1929年に創設された美術館は、1939年にこの地へ恒久的な建物を構え、以後およそ80年にわたって増改築を重ねながら拡張してきた。グッドウィンとストーンによる国際様式の原設計に、フィリップ・ジョンソン、シーザー・ペリ、谷口吉生、ディラー・スコフィディオ+レンフロが世代ごとに手を加えており、建物自体が近代建築の歩みを体現している。
歴史
美術館は1929年、アビー・オルドリッチ・ロックフェラーらによって創設され、当初は貸しビルの一室から始まった。1939年、フィリップ・L・グッドウィンとエドワード・ダレル・ストーンの設計により、西53丁目に最初の恒久的な建物が開館する。白大理石と硝子による端正な箱は、アメリカにおける国際様式建築の記念碑となった。1953年にはフィリップ・ジョンソンがアビー・オルドリッチ・ロックフェラー彫刻庭園を設計し、1964年には同じくジョンソンが東西の翼を増築する。1984年にはシーザー・ペリが住宅を兼ねる高層棟と展示空間を加えた。2004年、世界的な建築家を集めた国際コンペを制した谷口吉生が大規模な増改築を行い、現在の花崗岩と硝子による外観と吹き抜けの空間を生んだ。さらに2019年、ディラー・スコフィディオ+レンフロがゲンスラーと協働して西側へ拡張し、展示面積を大きく広げた。
建築的特徴
建物の核となるのは、依然として53丁目側に姿を見せる1939年の原設計棟である。六層の白大理石の箱に、半透明のガラスを張った展示階と水平連続窓のオフィス階を重ねた構成は、装飾を排した国際様式の典型を示す。中庭のアビー・オルドリッチ・ロックフェラー彫刻庭園は、ジョンソンが大理石と水盤、樹木で構成した都市のなかの静謐な余白であり、谷口の改築で美術館の中心として再定義された。谷口やディラー・スコフィディオ+レンフロが加えた近年の外装は、透明度の高いガラスのカーテンウォールによって街路と展示空間を視覚的につなぎ、内と外の連続性を強めている。
意義・現在
MoMAは、絵画・彫刻のみならず、写真・映画・デザイン・建築までを収集対象とした最初期の美術館の一つであり、「近代美術」を制度として定義づけた存在である。建築部門を早くから設け、1932年には国際様式を紹介する展覧会を開いて近代建築の普及に大きな役割を果たした。建物もまた、各時代を代表する建築家が増改築を担うことで、近代から現代に至る建築の変遷を一棟のうちに記録している。20万点を超える収蔵品を擁し、現在も世界で最も多くの来館者を集める美術館の一つとして知られる。