コーケルベルク聖心大聖堂 National Basilica of the Sacred Heart
ベルギーの首都ブリュッセル、コーケルベルクの丘に建つカトリックの大聖堂。1905年にレオポルド2世が礎石を据え、二度の大戦による中断を経て20世紀後半に完成した。アール・デコとネオ・ビザンティンを融合した、世界有数の規模を誇る教会である。
§1 — 概要概要
コーケルベルク聖心大聖堂(正式には聖心国立バシリカ)は、ベルギーの首都ブリュッセルの北西、コーケルベルクとガンショアンの境にある丘の上に建つカトリックの小バシリカである。パリのサクレ・クール聖堂に倣い、イエスの聖心に捧げられた。面積では世界有数、ベルギー国内では最大の教会で、緑青を帯びた巨大なドームがブリュッセル北西部のスカイラインを圧する。地元では立地にちなんで「コーケルベルクのバシリカ」の名で親しまれている。
歴史
建設の構想は19世紀末にさかのぼり、1905年、ベルギー独立75周年の祝典のなかで国王レオポルド2世が礎石を据えた。当初の設計者はネオ・ゴシックを得意とする建築家ピエール・ランジュロックで、壮大なゴシックの大聖堂が構想されていた。しかし第一次世界大戦と財政難により計画は頓挫する。戦後の1920年、アルベール・ファン・ハイフェルが新たな設計者に選ばれ、ゴシック案に代えて、アール・デコとネオ・ビザンティンを融合した記念碑的な構想を提示した。1925年のパリの装飾美術博覧会でこの案が高く評価され、工事が本格化する。だがファン・ハイフェルは1935年に急逝し、二度目の大戦による中断もあって、工事はその後も長く続いた。設計の意図を引き継いだポール・ロムの監督のもと、大ドームをはじめとする上部がようやく姿を整え、建物の全体が完成したのは1970年のことである。礎石から数えて60年を超える歳月を要した。
建築的特徴
構造は鉄筋コンクリートと煉瓦からなり、外観は褐色のテラコッタで覆われている。集中式の平面の中央には、地上から89メートルに達する巨大なドームがかかり、その前に二本の細い塔が立つ。様式としては、装飾と近代性の両立を図ったアール・デコと、ドームを核とするネオ・ビザンティンの空間構成とが組み合わされており、幾何学的に整理されたモティーフが内外を一貫して飾る。世界でも有数の規模をもつアール・デコ建築として知られ、量塊感のある力強い造形のなかに、繰り返される幾何学装飾の繊細さが同居している。鉄筋コンクリートという当時なお新しい構造を、記念碑的な宗教建築へと大胆に用いた点も特筆される。
意義・現在
コーケルベルク聖心大聖堂は、構想から完成までに二度の世界大戦をまたいだ、20世紀ベルギーの歩みそのものを刻む建築である。ゴシックからアール・デコへという設計の転換は、世紀の前半に建築の言語が大きく塗り替えられた事実をよく示している。1951年に献堂され、その後も工事を続けて1970年に完成した経緯は、長い時間をかけ、世代を越えて受け継がれた事業の重みを伝える。今日では礼拝のほか、展示やパノラマ展望、各種の催しの場としても用いられ、ブリュッセルを一望する高みとして多くの人が訪れている。