名築が収録する公開済みの建物のうち、テレビ・ラジオの送信や無線通信のために建てられ、あるいは使われてきた塔を13件選んだ。1889年のエッフェル塔から2012年…
モスクワに建つ高さ540mのテレビ・ラジオ塔。構造技師ニコライ・ニキーチンの設計により1967年竣工。プレストレスト・コンクリートを用いて当時世界一の自立構造物となり、1975年まで世界最高を保った。
§1 — 概要オスタンキノ・タワー(Останкинская телебашня)は、モスクワ北部オスタンキノ地区に建つテレビ・ラジオ放送塔である。高さ540.1メートル、設計はソ連の構造技師ニコライ・ニキーチン。1967年の竣工時には自立構造物として世界一の高さに達し、初めて500メートルを超えた建造物となった。1975年にトロントのCNタワーに抜かれるまで世界最高を保ち、今日もヨーロッパで最も高い自立構造物である。
モスクワの放送網拡張に対し、旧シャーボロフカ塔の能力が限界に達したことから、1957年に新塔の建設が決定された。設計競技を経て、ニキーチンが鋼ケーブルで補強したコンクリート塔の案を示した。工事は設計の確定を待たずに1960年に始まったが、浅い基礎への疑念から翌年いったん止まり、シュトゥットガルトのテレビ塔を設計したフリッツ・レオンハルトの助言で脚を4本から10本に増やすなど設計を改めて、最終設計が承認された1963年に再開された。十月革命50周年に合わせて工期が組まれ、1967年11月5日に開業した。当初は構造体の一部のみが稼働し、展望台とレストランを含む全施設の完成は1969年であった。2000年8月には高所で火災が発生し、消防士3名が犠牲となったが、塔の構造体そのものは崩落を免れ、その後修復された。
ニキーチンの設計の核心は、プレストレスト・コンクリートの採用にある。塔身に通した鋼ケーブルをあらかじめ緊張させてコンクリートに圧縮力を与えることで、自重と風荷重に耐える強度と、しなやかなたわみの両立を実現した。基礎は地中わずか数メートルに収まる浅い円環状で、重心を低く保つことで起き上がり小法師のように安定する。多くの技術者が安定性を危ぶみ建設中止を求める嘆願書まで出したが、塔は完成後も安定を保った。下部の円錐形の脚部は逆さにした百合の花に着想を得たとされ、上部には鋼鉄製のアンテナ支柱(マスト)が立つ。
オスタンキノ・タワーは、超高層の自立構造をコンクリートで実現しうることを示した戦後構造工学の記念碑である。シュトゥットガルトのテレビ塔に始まるコンクリート製電波塔の系譜を、桁違いの高さへ押し上げた。高さ337メートルの展望台と回転レストラン「第7天国」を備え、放送施設であると同時にモスクワを象徴する観光名所でもある。2000年の火災からの復旧を経て、現在も放送を続けながら市民と旅行者に開かれている。
名築が収録する公開済みの建物のうち、テレビ・ラジオの送信や無線通信のために建てられ、あるいは使われてきた塔を13件選んだ。1889年のエッフェル塔から2012年…