南ドイツ・バイエルンのベネディクト会修道院。764年創建の由緒をもち、18世紀に全面的に再建された。ヨハン・ミヒャエル・フィッシャー設計の聖堂は、南ドイツ・バロックを代表する傑作として名高い。
§1 — 概要概要
ドイツ南部、バイエルン州アルゴイ地方のオットーボイレンに建つベネディクト会の修道院である。764年に創建された古い歴史をもち、神聖ローマ帝国のもとでは自治権をもつ帝国修道院のひとつとして、世俗化の時点で約266平方キロメートルの領地と一万人ほどの住民を擁する小国家のような存在であった。今日その名を高めているのは、18世紀前半に新築された壮大な修道院建築と聖堂であり、南ドイツ・バロックの到達点のひとつに数えられる。
歴史
創建は764年、トートによるとされ、ベルガモのアレクサンデルに捧げられた。中世を通じて火災や衰退を繰り返したが、18世紀初頭に院長ループレヒト・ネスのもとで隆盛を迎える。1711年から1725年にかけて現在の修道院建築が築かれ、その壮麗さから「シュヴァーベンのエスコリアル」と称された。1737年には聖堂の建設が始まり、1766年に後任の院長アンゼルム・エルプのもとで完成している。修道院は1802年に世俗化されてバイエルンに併合されたが、のちに再興され、聖堂は1926年に小バシリカの称号を与えられた。
建築的特徴
修道院建築の設計には地元の棟梁ジンペルト・クラーマーが関わり、聖堂は南ドイツ・バロックの代表的建築家ヨハン・ミヒャエル・フィッシャーの構想によって実現した。広い身廊と交差部の高まりが生む明るく流動的な内部空間に、ヨハン・ヤーコプ・ツァイラーらによる天井フレスコ画と、繊細なスタッコ装飾、ロココの祭壇が一体となって展開する。名高いパイプオルガンを備えた聖堂は、光と装飾が渾然と溶け合う、バロックからロココへ移る時期の総合芸術といえる。
意義・現在
修道院図書館は華麗な漆喰天井で飾られ、写本装飾でも名を知られた。世俗化や戦禍をくぐり抜けたこの建築群は、今日も活動を続ける修道院として保たれている。その堂々たる構えと内部装飾は、南ドイツ・バロックを語るうえで欠かせない作例として、多くの巡礼者・訪問者を迎えている。