勝利の聖母教会 Our Lady of Victory Church
勝利の聖母教会は、マルタの首都ヴァレッタで最初に建てられた教会。1565年の大包囲戦に勝利した翌1566年に騎士団によって着工された、ヴァレッタ発祥の地に建つ歴史的聖堂である。
§1 — 概要概要
勝利の聖母教会は、マルタの首都ヴァレッタに建つカトリックの教会堂である。1565年、オスマン帝国の大軍を退けた大包囲戦の勝利を記念して聖母に捧げられ、新都市ヴァレッタにおいて最初に完成した建物として知られる。マルタ騎士団による都市建設の出発点に位置づけられる、小規模ながら象徴的な聖堂であり、ヴァレッタ発祥の地に立つ記念碑的な存在である。
歴史
着工は大包囲戦の翌1566年のことである。設計は騎士団に仕えた建築家ジローラモ・カッサールが手がけたとされる。建設を強く推し進めた騎士団総長ジャン・ド・ヴァレットは、新都市にその名を残した人物であり、1568年に没するとこの教会の地下に葬られた。ヴァレッタにおける最初の埋葬であり、その遺骸は後に聖ヨハネ准司教座聖堂へ移されている。1617年には教区教会の地位を得た。18世紀には大きく装いを改められ、1716年から18年にかけてアレッシオ・エラルディが天井画を描き、1752年には正面がバロック様式に改められて、教皇インノケンティウス12世の胸像が掲げられた。第二次世界大戦中の1942年には屋根が損傷を受けたが、2000年に文化遺産保護団体ディン・ル=アルト・ヘルワの手で修復された。
建築的特徴
創建当初は、ルネサンス期の様式による簡素で小ぶりな聖堂であった。その後の改修によって、今日見られる正面はバロック様式の装飾性をまとうものとなっている。内部では、エラルディが内陣のヴォールトに描いた天井画が見どころであり、聖母の勝利を主題とする絵画が空間を彩る。正面上部には教皇インノケンティウス12世の胸像が据えられ、騎士団とローマ教皇庁との結びつきを物語る。規模は大きくないが、ルネサンスの骨格にバロックの装飾が重なった、マルタ建築の重層性を示す一例である。
意義・現在
勝利の聖母教会は、ヴァレッタという都市の歴史が始まった場所そのものである。大包囲戦の勝利という記憶と、都市の創設者ド・ヴァレットの埋葬の地という二重の意味において、マルタの国家的記憶に深く結びついている。マルタのグレード1指定建造物として最も手厚く保護され、修復を経た今日もヴァレッタの起点を示す聖堂として、訪れる人々にその由来を伝えている。