ヴェネツィア、大運河に面する18世紀の貴族邸。ジョルジョ・マッサリが1748年から手がけた、共和国末期に建てられた大運河最後の大邸宅で、現在はピノー・コレクションの現代美術館として用いられている。
§1 — 概要概要
パラッツォ・グラッシ(Palazzo Grassi)は、ヴェネツィアの大運河沿い、サン・サムエーレ広場の近くに建つ貴族の館である。ヴェネツィア共和国が滅びる直前の18世紀後半に建てられた、大運河に臨む最後の大邸宅として知られる。周囲のビザンティン=ロマネスク風やバロックの館の中にあって、端正な古典主義の佇まいがひときわ目を引く。
歴史
建物はグラッシ家の依頼により、建築家ジョルジョ・マッサリの設計で1748年から1772年にかけて建てられた。マッサリは対岸のカ・レッツォーニコを完成させつつ本作に着手したと伝えられる。1840年にグラッシ家が手放したのち所有者は転々とし、20世紀にはフィアットの所有となって、1980年代から展覧会場として活用された。2005年にフランスの実業家フランソワ・ピノーが取得し、日本の建築家・安藤忠雄の改修を経て、2006年に現代美術の拠点として再開した。
建築的特徴
ファサードは白大理石で仕上げられ、ヴェネツィアの商館に典型的な水際の荷役用開口を持たない、純粋な邸宅建築としての構えをとる。各層はピラスターと窓の規則的な連続で律せられ、中央には格式を示すピアノ・ノービレ(主階)が置かれる。内部の大階段はミケランジェロ・モルライターらのフレスコで飾られる。マッサリ後期の作にふさわしく、バロックの華美を脱した抑制された古典主義が全体を貫いている。
意義・現在
パラッツォ・グラッシは、ヴェネツィア貴族文化の掉尾を飾る建築であると同時に、歴史的建造物が現代美術館へと転生した好例でもある。安藤忠雄による改修は、既存の構造を尊重しつつコンクリートの新たな層を挿し込み、18世紀の館と現代芸術を共存させた。対岸のプンタ・デッラ・ドガーナと並び、現在もヴェネツィアにおける現代美術の中心の一つをなしている。
関連する建築
Related※ イタリアの文化財保護法(文化財・景観法典)により、文化財の画像の商業利用には制約が及ぶ場合がある。