ピーター・モカバ・スタジアム Peter Mokaba Stadium
南アフリカ・リンポポ州ポロクワネの球技場。2010年FIFAワールドカップに向けて新設され、地元のプリズム・アーキテクツと英国のAFLアーキテクツが設計した。バオバブの幹を思わせる四隅の巨大な支柱が、屋根の鉄骨架構を受け止める。
§1 — 概要概要
ピーター・モカバ・スタジアム(Peter Mokaba Stadium)は、南アフリカ共和国北部、リンポポ州の州都ポロクワネ(旧ピーターズバーグ)にあるサッカーとラグビーの競技場である。2010年FIFAワールドカップのために新設された5つのスタジアムの一つで、収容人数は約4万5000人。設計は、ポロクワネに拠点を置くプリズム・アーキテクツと、イギリス・マンチェスターのAFLアーキテクツの協働による。名称は、ポロクワネ近郊に生まれ、反アパルトヘイト闘争を経てANC(アフリカ民族会議)青年同盟の議長やマンデラ政権の副大臣を務めたピーター・モカバ(1959–2002年)にちなむ。
歴史
開催都市に選ばれたポロクワネ市は、当初、同名の既存競技場を拡張する案を検討した。しかし座席数の限られた旧施設の改修は退けられ、その東隣に新しいスタジアムを建てる方針が固まった。2007年3月、市は建設大手WBHOと地元企業ポール・ビルディングの共同企業体を施工者に選び、同月に着工した。
工事は32か月に及び、2009年11月に契約上の引き渡しを終えた。2010年1月23日、国内外の4クラブを招いた記念大会「ピーター・モカバ・カップ」でこけら落としを迎え、同月30日には初めてのラグビーの試合も開かれた。総事業費は約12億4500万ランドに上る。ワールドカップ本大会では座席数を41,733に絞り、グループリーグの4試合(アルジェリア対スロベニア、フランス対メキシコ、ギリシャ対アルゼンチン、パラグアイ対ニュージーランド)を開催した。
建築的特徴
造形の手がかりは、リンポポ州の風景を象徴するバオバブの木である。主体はコンクリート造で、スタンドを覆う屋根面を支える鉄骨の架構は、スタジアムの四隅で一つに束ねられ、それぞれ巨大な「幹」に受け止められる。幹の内部には観客を上層へ導くスロープと設備コアが収められ、構造・動線・設備を一本の塔にまとめた形が、そのまま建物の外観を決めている。
屋根は、夏の雨季に吹きつける強風を受けてたわむことを前提に設計された。当初の計画では全周のスタンドを屋根で覆う予定だったが、予算と工程の制約から全面的な屋根は西側のメインスタンドに限られ、残る三方はごく一部を覆うにとどまった。座席は観客が競技を間近に見られるようピッチに寄せて配され、芝面には天然芝を人工繊維で補強したハイブリッド芝を用いる。敷地には乗用車約2,400台とバス100台分の駐車場が設けられた。
意義・現在
大会に向けて新設された5会場のうち、ケープタウン、ダーバン、ポートエリザベスの3会場はドイツのgmpが設計に関わり、ムボンベラ・スタジアムは南アフリカの事務所のみで設計された。本スタジアムは地元の事務所と海外のスポーツ施設専門の事務所との協働から生まれ、土地を象徴する樹木を構造の形に置き換えた点に特色がある。
大会後は南アフリカ・プレミアシップのクラブが本拠地や代替会場として使い、近年はセクフクネ・ユナイテッドが拠点とする。国内カップ戦ネドバンク・カップの決勝も、2016年と2026年の2度開かれた。同年には市長が、国内随一の排水性能をもつピッチだと述べている。
関連する建築
Related※ 南アフリカにはパノラマの自由(公共の場にある建築物の写真を自由に利用できる規定)がなく、本スタジアム(2009年竣工、プリズム・アーキテクツ/AFLアーキテクツ設計)の意匠には著作権が存続する。掲載写真は撮影者によるCC BY 2.0ライセンスの素材だが、被写体である建築意匠の権利は別途存続する点に留意。