パリのセーヌ川に架かる、最も華麗とされる装飾橋。1900年の万国博覧会に合わせ、シャンゼリゼとアンヴァリッドを結んで架けられた、単径間の鋼アーチによるボザール様式の橋である。
§1 — 概要概要
アレクサンドル3世橋(Pont Alexandre-III)は、フランス・パリのセーヌ川に架かる橋である。右岸のシャンゼリゼ地区と、左岸のアンヴァリッド地区とを結ぶ。金箔の彫像、ニンフ、有翼の馬などをまとった豪奢な装飾で知られ、しばしばパリで最も華やかな橋と評される。橋名は、1892年に露仏同盟を結んだロシア皇帝アレクサンドル3世にちなむ。
歴史
橋は1900年の万国博覧会に合わせて計画された。1896年、来仏した皇帝ニコライ2世が定礎し、博覧会が開かれた1900年に完成・開通する。同じ博覧会のために造られたグラン・パレ、プティ・パレと一連の景観をなし、橋の意匠もグラン・パレと呼応するよう整えられた。設計は建築家ジョゼフ・カシアン=ベルナールとガストン・クザンが担い、構造の計画は技師ジャン・レサルとアメデ・アルビーが手がけた。装飾の彫刻群はエマニュエル・フレミエ、ギュスターヴ・ミシェル、アルフレッド・ルノワール、ジョルジュ・ガルデら多くの彫刻家の手になる。1975年には歴史的記念物(モニュマン・イストリック)に指定された。
建築的特徴
構造の核心は、セーヌをひとまたぎする単径間の鋼アーチ橋である。アーチの高さをわずか6メートルに抑えたのは、シャンゼリゼからアンヴァリッドへ抜ける眺めを橋桁で遮らないためであった。低く伏せた一本のアーチという工学的な解は、両岸に立つ高さ17メートルの石造の橋脚が重しとなって成立する。橋脚の頂には黄金のフェーム(名声の女神)像が天馬を従え、構造上の要をそのまま記念碑的な装飾へと昇華させている。鉄という近代の素材を、ボザール様式の古典的な構成と、曲線を多用するアール・ヌーヴォーの街灯・装飾とが包み込む点に、世紀末パリの折衷的な美学がよく表れている。
意義・現在
アレクサンドル3世橋は、1900年の万博が残した都市装置のひとつであり、技術の橋でありながら同時に巨大な彫刻でもあるという、19世紀末の理想を体現する。橋はセーヌ河岸の一部としてユネスコ世界遺産「パリのセーヌ河岸」に登録された区域内に位置し、現在もパリを代表する景観として、市民と観光客に親しまれている。