ジェセル王のピラミッド Pyramid of Djoser
エジプト・サッカラに立つ、第三王朝のジェセル王のために築かれた世界最古級の石造記念建築。宰相イムホテプの設計と伝えられ、マスタバを六段に積み上げた階段ピラミッドは、のちの真正ピラミッドの原型となった。
§1 — 概要概要
ジェセル王のピラミッドは、エジプト・カイロ南方のサッカラの墓地遺跡に立つ、古代エジプト第三王朝(前27世紀頃)の王ジェセルのために築かれた階段ピラミッドである。六段に積み上げられた四角錐状の構造物で、エジプトで最初に造られたピラミッドであり、現存する世界最古級の大規模な切石造建築として知られる。設計は王に仕えた宰相イムホテプによると伝えられ、広大な葬祭複合体の中心に位置する。
歴史
建造は前27世紀、ジェセル王の治世に行われた。当初は当時一般的だった方形・平屋根のマスタバとして計画されたが、設計はたびたび改められ、最終的に大小六段のマスタバを積み重ねた階段状の姿へと発展した。日干し煉瓦に代わって切り出した石灰岩を主要な材料に用いた点が画期的で、外面はかつて磨いた白色石灰岩で覆われていた。長い年月のあいだに外装の多くは失われたが、構造体は残り、近年は十数年にわたる修復を経て2020年に内部の見学が再開された。
建築的特徴
ピラミッドは当初およそ62.5メートルの高さをもち、底面は約109×121メートルにおよぶ。周囲には壁で囲まれた広大な中庭が広がり、祭祀のための建物群や付け柱を備えた回廊、儀礼用の偽の建築などが配されている。これらの石造構築物は、それまで植物や日干し煉瓦で造られていた要素を、永続する石で写し取ったものとされ、新しい素材を用いながらも古い建築の記憶を色濃くとどめている。垂直に積み上げる構成は、墓を天へと近づけようとする記念碑的な意志の表れでもあった。
意義・現在
ジェセル王のピラミッドは、平らなマスタバから真正ピラミッドへと至るエジプト建築の発展の出発点に位置づけられる。石を大規模に組積して記念建築をつくるという発想は、のちのギザの大ピラミッドへと受け継がれた。設計者とされるイムホテプは、名の知られた最初期の建築家として後世に記憶され、やがて知恵と医術の神として神格化された。現在はメンフィスとその墓地遺跡の一部として世界遺産に登録され、エジプト初期王朝期を象徴する遺構となっている。