リズラン城 Rhuddlan Castle
ウェールズ北部、クルウィド川のほとりに立つ城の遺構。13世紀末にイングランド王エドワード1世がウェールズ征服のために築いた城の一つで、二重の城壁をもつ同心円式城郭の初期の例として知られる。
§1 — 概要概要
リズラン城(Castell Rhuddlan)は、ウェールズ北部、クルウィド川のほとりに立つ城の遺構である。13世紀末、イングランド王エドワード1世がウェールズ征服のために築いた一連の城――いわゆる「鉄の環」――の一つで、設計はサヴォワ出身の築城の名手ジェイムズ・オブ・セント・ジョージによる。二重の城壁をもつ同心円式城郭の初期の例として知られる。
歴史
クルウィド川の渡河点にあたるこの地は、古くからウェールズとイングランドの争いの要衝であった。1277年、第一次ウェールズ戦争に勝利したエドワード1世は、ここに石造の城の建設を命じた。工事ははじめガスコーニュの技師マスター・ベルトラムのもとで始まったが、まもなくジェイムズ・オブ・セント・ジョージが引き継ぎ、1282年に完成した。1284年には、ウェールズにイングランドの法と州制を導入する「リズラン法令」がこの城で発布された。その後も争乱の舞台となったが、イングランド内戦ののち、1648年に軍事利用を防ぐため破却され、以後は廃墟となった。
建築的特徴
城は、内外二重の城壁を巡らせた同心円式の構成をとる。内郭はひし形の平面をとって四隅に円塔を据え、東西の二か所に双塔式のゲートハウスを構える点に特色がある。これを低い外郭の城壁が取り巻き、胸壁を頂く壁が幾重にも敵を阻んだ。最大の見どころは、城を海とつなぐための土木工事である。エドワードは、内陸にあるこの城へ船で物資を運べるよう、蛇行するクルウィド川を約3キロにわたって直線化・運河化させた。これにより城は海路で補給を受けられ、包囲に強い拠点となった。
意義・現在
リズラン城は、エドワード1世によるウェールズ征服を象徴する建物の一つである。同心円式という当時最新の築城術と、川そのものを造り替える大規模な土木とを結びつけた点で、中世ヨーロッパの軍事建築の到達を示している。ここで発布された法令によってウェールズの統治が大きく変わったことからも、その歴史的な重みは大きい。現在はウェールズ政府の文化遺産機関カドゥのもとで保存され、廃墟となってなお、川辺にその威容をとどめている。