ロチェスター大聖堂 Rochester Cathedral
イングランド・ケント州ロチェスターの大聖堂。604年の創建はカンタベリーに次ぐ英国第2の古さで、現在の建物は1080年頃に司教ガンダルフが始めたノルマン式を核に、ゴシックの東部を加えて成る。
§1 — 概要概要
ロチェスター大聖堂(正式名 Cathedral Church of Christ and the Blessed Virgin Mary)は、イングランド南東部ケント州ロチェスターに建つ、英国国教会の大聖堂である。604年の創建はカンタベリーに次いで古く、イングランドで2番目に古い司教座聖堂とされる。現在の建物は、1080年頃に司教ガンダルフが始めたノルマン様式(ロマネスク)を核とし、のちにゴシックの東部を加えて成る。
歴史
聖堂の起源は、カンタベリーへ派遣された宣教団の一人ユストゥスが604年に司教座を置いたことに遡る。サクソン期の聖堂は現存しない。ノルマン征服後の1077年、ベック修道院出身の修道士ガンダルフが司教に任じられ、1080年頃から石造の大聖堂の再建に着手した。ガンダルフは「最初の王の技師」と称された造営の名手で、ロンドン塔のホワイト・タワーやロチェスター城の築造も指揮している。聖堂は1130年頃に献堂されたが、12世紀には度重なる火災に見舞われた。1179年の火災ののち、東部は当時新しかった初期イングランド・ゴシックで建て直された。
13世紀、近郊で殺害されたスコットランドのパン職人ウィリアム・オブ・パースの墓に奇蹟が伝えられて巡礼地となり、その喜捨が東部の造営を支えた。14世紀には中央塔と尖塔が高くされ、聖堂はほぼ現在の姿に達した。英国法の最古の集成を伝える12世紀の写本『テクストゥス・ロフェンシス』も、この聖堂に伝来する。
建築的特徴
西正面は、イングランド有数のロマネスクのファサードとして知られ、深く刻まれた半円アーチの門口(ポータル)を中心に、半円アーチの列が壁面を律する。身廊はガンダルフ以来のノルマンの太い柱と半円アーチが支配し、重厚な石の量塊が内部を包む。これに対して、東の内陣・至聖所は尖頭アーチとリブ・ヴォールト、パーベック大理石の細い柱を用いた初期ゴシックで、軽やかに上昇する。地下には地下聖堂が広がり、その西側はノルマン期、東側はゴシック期と、建物の二つの時代がそのまま積層している。
意義・現在
ロチェスター大聖堂は、ノルマン期のロマネスクと、それに続くゴシックが一つの建物のなかで出会う、イングランド中世建築の貴重な証人である。グレードI指定建造物として保護され、1400年以上にわたり礼拝の場であり続けている。近年の改修で地下聖堂は展示空間として整えられ、『テクストゥス・ロフェンシス』などの宝物が公開されている。