ソコッル・メフメト・パシャ・ジャーミイ Sokollu Mehmed Pasha I Mosque
イスタンブール・カドゥルガ地区の斜面に建つ、宮廷建築家ミマール・スィナン円熟期の傑作モスク。大宰相ソコッル・メフメト・パシャ夫妻が寄進し、最高級のイズニックタイルとカアバ由来の聖石片で知られる。
§1 — 概要概要
ソコッル・メフメト・パシャ・ジャーミイ(トルコ語: Sokollu Mehmed Paşa Camii)は、トルコ・イスタンブールの旧市街、ファティ区カドゥルガ地区に建つ16世紀のオスマン・モスクである。オスマン帝国の宮廷建築家ミマール・スィナンの設計になり、最高級のイズニックタイルで飾られた内部と、聖地メッカのカアバに由来する黒石の断片を蔵することで知られる。古典オスマン建築の精華の一つに数えられる。
歴史
このモスクは、スレイマン1世に仕えて帝国の最盛期を支えた大宰相ソコッル・メフメト・パシャと、その妻でセリム2世の娘であるイスミハン・スルタンの寄進によって建てられた。中庭北門の銘文はヒジュラ暦979年(西暦1571/72年)の完成を伝えており、スィナンが円熟期に手がけた数多くの宰相モスクのなかでも、とりわけ評価の高い一作である。建設地はマルマラ海を見下ろす急傾斜地で、かつてビザンティンの教会があった場所とされる。スィナンはこの地形の難点を、二層構造の前庭を設けることで巧みに解決した。
建築的特徴
礼拝室は矩形のなかに六角形を内接させた平面をとり、直径約13メートル・高さ約22.8メートルの単一ドームを四隅の半ドームが支える。スィナンらしい明快な幾何学と、優れた採光・音響が空間を律する。内壁を覆うのは、青・緑、そして失われた製法による鮮烈な「コーラル・レッド」を含むイズニックタイルで、その質の高さは同時代随一とされる。ミフラーブとミンバル、入口上部の三か所には、カアバの黒石の断片がはめ込まれている。傾斜地に対応した二層の前庭は、下層を賃貸の店舗、上層をマドラサ(学院)の小室群とし、モスク・学院・収益施設を一体に組み込む点でも独創的である。北東隅には単一のミナレットが立つ。
意義・現在
ソコッル・メフメト・パシャ・ジャーミイは、巨大さではなく、地形と機能と装飾を高度に統合した設計の妙によって、スィナン建築の到達点の一つと評価される。スルタンアフメト・モスク(ブルー・モスク)やアヤソフィアにほど近い旧市街にありながら観光客の喧噪を免れており、今日も礼拝の場として用いられている。