ドイツ・ミュンスターの司教座聖堂。1225年から1264年にかけて建てられ、ロマネスクからゴシックへの過渡期の造形を示す。二基の塔をもつ西構えと幅広い身廊で知られる、市の象徴である。
§1 — 概要概要
聖パウルス聖堂(St.-Paulus-Dom)は、ドイツ西部ミュンスターの中心に建つ、ミュンスター司教区の司教座聖堂である。使徒パウロに捧げられたこの大聖堂は、歴史的な市庁舎とともに市を代表する記念建造物であり、ロマネスクからゴシックへと移りゆく13世紀の造形を、その量塊のなかに刻みつけている。
歴史
現在の聖堂は、同じ場所に営まれたカロリング朝・オットー朝の二つの先行聖堂に続く三代目の建築で、ホルステベルクと呼ばれる小高い丘の上に1225年から1264年にかけて建てられた。長い建設期間のなかで、当初のロマネスク的な構想と、新たに北フランスから伝わったゴシックの手法とが重なり合い、両様式の要素が一つの建築のうちに併存することになった。1943年の空襲で聖堂は甚大な被害を受け、丸天井や壁の一部が崩落したが、1946年から1956年にかけて再建された。とりわけ内陣をはじめとする内部空間は、1955年から56年にかけてエミール・シュテファンらの手で、第二バチカン公会議の典礼改革を先取りする簡素な構成へと改められている。
建築的特徴
西側に立つヴェストヴェルクは、ほぼ同形の二基の塔を備えたロマネスク的な構えで、聖堂全体に重厚な印象を与えている。一方、三廊式の身廊は幅広く、リブで分割された丸天井を架けて、ゴシック的な広がりをもつ内部空間をつくり出す。東側には張り出した翼廊と、半円形に閉じる内陣のアプスが連なる。ロマネスクの塔とゴシックの身廊が一体となったこの構成は、両時代のはざまに立つ西部ドイツ(ヴェストファーレン)の聖堂建築に特徴的なもので、過渡期ならではの独特の量感を生んでいる。
意義・現在
聖パウルス聖堂は、ロマネスクとゴシックという二つの大様式の接点を一身に体現する点で、中世建築史のうえで重要な位置を占める。戦災からの再建を経て、原初の石組みと20世紀半ばの簡素な内部とが共存する現在の姿は、千年に近い歴史の累積そのものを物語っている。今日もミュンスター司教区の中心としていとなまれ、内部の天文時計や回廊とともに、訪れる人々に開かれている。州の文化財として保護され、市民にとっては街の不変の象徴でありつづけている。