ニューヨーク五番街に立つ用途複合の超高層。デア・スカットの設計で1980年代に建ち、28面の鋸歯状ファサードと、滝を備えた5層のピンク大理石アトリウムで1980年代の華やぎを体現した。
§1 — 概要概要
トランプ・タワーは、ニューヨーク・マンハッタンの五番街と東56丁目が交わる一角に立つ、店舗・事務所・住戸を一棟に収めた用途複合型の超高層ビルである。開発業者ドナルド・トランプの名を冠し、高さ約202メートル・58階建て(広告上は68階と称された)。デア・スカットの設計により、反射ガラスのカーテンウォールをまとった鋸歯状の塔として1983年に開業した。
歴史
建設地には高級百貨店ボンウィット・テラーの旧店舗があった。トランプは1979年に同地を取得し、1980年から塔の建設に着手、1983年に店舗・住戸・事務所が段階的に開業した。解体に際して旧建物の装飾彫刻が破壊されたことは、美術界の批判を招いた。竣工を税制優遇の期限に間に合わせるため、工期短縮を優先して鉄骨ではなく鉄筋コンクリート造が採られている。完成後の塔はトランプ・オーガニゼーションの本拠となり、2016年には所有者が大統領選への出馬を表明する舞台ともなった。
建築的特徴
塔は平面を多数の角で切り欠いた28面体とし、各階を僅かに後退させるセットバックによって上昇感と角部屋の数を稼いでいる。外装は暗色の反射ガラスで覆われ、当時主流だった箱形の国際様式の建物群との差異化が図られた。最大の見どころは基壇部の5層吹き抜けのアトリウムで、ピンク色のブレッチャ大理石と磨かれた真鍮、壁面を流れ落ちる滝が、1980年代の奢侈の感覚を象徴した。
意義・現在
トランプ・タワーは、開発業者の名を商標として前面に押し出した建築の典型であり、その派手な内装と巨大なロゴは以後のトランプ系不動産の原型となった。建築的な評価は賛否が分かれたが、五番街の商業空間と私有公開空地を組み合わせた複合開発の事例として記憶される。現在も商業・住宅複合ビルとして使われ、観光客を集める一方、所有者の政治的経歴とも結びついて語られる存在となっている。