ドイツのフランクフルトに建つ高さ208メートル、53階建ての超高層ビル。1993年竣工、KPFの設計で、DZ銀行本部を構成する。頂部の半円状の「王冠」は皇帝戴冠の地にちなむ。正式名は所在地に由来する。
§1 — 概要概要
ドイツのフランクフルト・アム・マイン、ヴェステント地区に建つ高さ208メートル、53階建ての超高層ビルである。1993年に竣工し、隣接するシティハウスとともにDZ銀行の本部を構成する。設計はアメリカの設計事務所コーン・ペダーセン・フォックス(KPF)で、明るい花崗岩に覆われた白く輝く外観と、頂部を飾る半円状の「王冠」によって、フランクフルトの摩天楼群のなかでもひときわ目を引く存在となっている。この王冠から「クローネンホーホハウス(王冠の高層ビル)」とも呼ばれ、正式名称は所在地の通り名にちなむヴェステントシュトラーセ1である。
歴史
1980年代末からの計画を経て1993年に完成した。KPFのなかではウィリアム・ペダーセンが設計を主導し、同事務所がモントリオールに手がけた高層ビルと作風の連続性が指摘される。1995年にはアメリカの建築家団体から、多機能超高層ビル部門の「ベスト・ビルディング・オブ・ザ・イヤー」に選ばれている。2020年代に至っても、フランクフルトおよびドイツで四番目に高い超高層ビルの座を保っている。
建築的特徴
鉄筋コンクリート造に窓を穿った外壁をもち、各階の高さはおよそ3.6メートル、基準階の床面積は約950平方メートルである。淡い花崗岩のファサードは遠くからも白く明るく見え、頂部には十一本の梁を半円状に並べた「王冠」が掲げられている。これは神聖ローマ皇帝の戴冠の地であったフランクフルトの歴史にちなむもので、王冠は戴冠式が行われた大聖堂のある旧市街の方角を向く。冬季には氷柱の落下を防ぐため、この鋼鉄製の王冠は加熱される。低層部には飲食店を備えた公開ロビーが設けられ、アメリカの高層建築の手法が参照されている。
意義・現在
正面の入口前には、クレス・オルデンバーグとコーシェ・ヴァン・ブリュッヘンによる彫刻《襟とネクタイ》が置かれ、建築と現代美術が呼応する。ポストモダン期の高層建築として、歴史的な記憶を抽象化した頂部の意匠は、機能一辺倒になりがちな超高層ビルに土地の物語を重ねた試みとして受けとめられている。