ユルドゥズ・ハミディエ・モスク Yıldız Hamidiye Mosque
イスタンブール、ユルドゥズ宮殿に近い丘に建つオスマン帝国末期の勅願モスク。スルタン・アブデュルハミト2世の発注により1884〜86年に建てられ、ネオ・ゴシックとオスマン古典の意匠が融合する点で異彩を放つ。
§1 — 概要概要
ユルドゥズ・ハミディエ・モスクは、イスタンブールのベシクタシュ地区ユルドゥズに建つオスマン帝国末期の勅願モスクである。ユルドゥズ宮殿へ向かう道沿いに位置し、ネオ・ゴシックとオスマン古典の意匠を併せ持つ折衷的な外観で知られる。単一のミナレットを備えた、比較的小規模なモスクである。
歴史
本モスクは、宮殿に居を移したスルタン・アブデュルハミト2世の発注により、1884年から1886年にかけて建設された。スルタンが金曜礼拝に赴くための宮廷モスクとして機能し、宮殿から沿道を進むその行幸(セラムルク)は外国の賓客も見物する一種の儀礼として知られた。1905年7月21日には、礼拝に向かうスルタンを狙った馬車爆弾事件がモスク前で発生し、襲撃そのものは未遂に終わったものの、多数の死傷者を出した。2010年代に約4年をかけた修復が行われ、2017年に再公開されている。
建築的特徴
矩形平面の上に構成され、外観には尖頭アーチや小尖塔といったゴシック・リヴァイヴァルの語彙が大胆に取り入れられている。建物は二層構成をとり、上階にはスルタン専用の桟敷(フンキャール・マフフィリ)が設けられた。一方で、礼拝堂やミフラーブまわりにはオスマン伝統の装飾が施され、ミナレットの形態にも古典的な様式が残る。西欧の歴史主義建築の影響を受けつつ、帝国独自の様式と接合した点に、近代化を志向した時代の建築観がうかがえる。
意義・現在
ユルドゥズ宮殿群を構成する建築の一つとして、ユネスコ世界遺産の暫定リストに記載されている。装飾の細部に至るまで折衷の論理が貫かれた本モスクは、東西の様式が交差したオスマン末期の建築を今に伝える、貴重な遺構である。修復を経た現在も礼拝に使われる現役のモスクであり、ユルドゥズ宮殿一帯を訪れる人々が足を運ぶ名所ともなっている。