EST. 2026 — Editorial Archive of Notable Architecture

帝政様式

Empire style
年代
1804 — 1830
地域
フランス・ロシア
時代
新古典・歴史主義

帝政様式(アンピール、Empire style)は、19世紀初頭のナポレオン帝政期のフランスに興り、ヨーロッパ各地に広まった新古典主義の一様式である。先行する新古典主義の厳格な古典回帰をさらに推し進め、古代ローマの帝国意匠やエジプト・ギリシアのモチーフを、権威の表現として大胆に取り入れた点に特徴がある。建築では、列柱廊やペディメント、凱旋門といった古代の記念碑的要素が好まれ、量塊感のある重厚な壁面と左右対称の構成が重んじられた。柱にはコリント式やドーリア式が用いられ、装飾には月桂樹、鷲、勝利の女神、スフィンクスなど、勝利と帝権を象徴する図像がちりばめられた。家具や室内装飾の分野でも、マホガニーと金銅金具による荘重な様式が確立し、建築と一体の総合的な環境がつくられた。フランスではパリの凱旋門やマドレーヌ寺院がこの様式を代表し、ナポレオンの威光とともに各国の宮廷へ伝播した。とりわけロシアでは、アレクサンドル1世のもとで「ロシア帝政様式」として独自に展開し、サンクトペテルブルクの記念碑的な都市景観を形づくった。ヴォロニーヒンのカザン聖堂やロッシの諸作はその到達点である。帝政様式は、様式を国家の威信の表現として用いる19世紀的な歴史主義の幕開けを告げつつ、ナポレオン体制の崩壊後はその政治的な含意を失い、やがて室内向きで穏健なビーダーマイヤーや、多様な過去様式を併用する折衷主義へと移行していった。

帝政様式
§1

代表建築

Buildings
古典主義 カザン聖堂
1811 · サンクトペテルブルク
カザン聖堂
イヴァン・コロージン

サンクトペテルブルクのネフスキー大通りに面するロシア正教会の聖堂。アンドレイ…

帝政様式 ヴァンドーム円柱
1810 · パリ
ヴァンドーム円柱
Jean-Baptiste Lepère

パリ1区のヴァンドーム広場の中央に建つ記念柱。ナポレオン1世がアウステルリッツ…

帝政様式 ナルヴァ凱旋門
1834 · サンクトペテルブルク
ナルヴァ凱旋門
Giacomo Quarenghi

サンクトペテルブルクに立つ、ナポレオン戦争の勝利を記念する凱旋門。1814年の木…

§2

様式の系譜

Lineage
親様式
新古典主義
本様式
帝政様式
隣接する様式