古典主義
帝政様式(アンピール、Empire style)は、19世紀初頭のナポレオン帝政期のフランスに興り、ヨーロッパ各地に広まった新古典主義の一様式である。先行する新古典主義の厳格な古典回帰をさらに推し進め、古代ローマの帝国意匠やエジプト・ギリシアのモチーフを、権威の表現として大胆に取り入れた点に特徴がある。建築では、列柱廊やペディメント、凱旋門といった古代の記念碑的要素が好まれ、量塊感のある重厚な壁面と左右対称の構成が重んじられた。柱にはコリント式やドーリア式が用いられ、装飾には月桂樹、鷲、勝利の女神、スフィンクスなど、勝利と帝権を象徴する図像がちりばめられた。家具や室内装飾の分野でも、マホガニーと金銅金具による荘重な様式が確立し、建築と一体の総合的な環境がつくられた。フランスではパリの凱旋門やマドレーヌ寺院がこの様式を代表し、ナポレオンの威光とともに各国の宮廷へ伝播した。とりわけロシアでは、アレクサンドル1世のもとで「ロシア帝政様式」として独自に展開し、サンクトペテルブルクの記念碑的な都市景観を形づくった。ヴォロニーヒンのカザン聖堂やロッシの諸作はその到達点である。帝政様式は、様式を国家の威信の表現として用いる19世紀的な歴史主義の幕開けを告げつつ、ナポレオン体制の崩壊後はその政治的な含意を失い、やがて室内向きで穏健なビーダーマイヤーや、多様な過去様式を併用する折衷主義へと移行していった。