ジャコベサン様式
Jacobethanジャコベサン様式(Jacobethan)は、16世紀後半から17世紀初めのイングランド・ルネサンス、すなわちエリザベス朝とジェームズ朝の建築を手本として、19世紀のイギリスで流行したリヴァイヴァル様式である。ジャコビアン・リヴァイヴァルとも呼ばれる。二つの時代の要素を区別せずに混ぜて用いることが多かったため、詩人ジョン・ベッチェマンが1933年に「エリザベサン」と「ジャコビアン」を一語に縮めて名づけ、この呼び名が美術史の用語として定着した。

流行は1820年代末に始まる。1835年に告示された国会議事堂の設計競技は、ゴシックかエリザベス朝様式のいずれかで応募することを求めており、中世のゴシックと並んで、テューダー朝以後の英国ルネサンスも「国民の様式」の候補とみなされていたことがわかる。1839〜49年に刊行されたジョゼフ・ナッシュの石版画集『昔日のイングランドの邸宅』は、古いカントリー・ハウスの内外を生き生きと描いて人気を集め、この様式の語彙を広く知らせた。様式を定義する作とされるのは、1830年代にアンソニー・サルヴィンが設計したリンカンシャーのハーラクストン・マナーである。ほかに、ジョゼフ・パクストンが1850年代に手がけたメントモア・タワーズや、A・J・ハンバートのサンドリンガム・ハウスが代表例に挙げられる。
形態の特徴は、赤煉瓦の壁に明るい色の石で窓や出入口を縁取る配色(ハーラクストンのように全体を石で築く例もある)、縦横の石の桟で区切った大きな格子窓、外へ張り出した出窓、急勾配の切妻や曲線を描く妻壁、屋上のバルストレード、そして林立する高い煙突にある。扁平な四心アーチや、革帯を組み合わせたようなストラップワークの装飾もよく用いられる。左右対称を基本としながら塔や小塔を加え、屋根の輪郭に変化をつけることが多い。
系統としては、イギリスにおけるネオルネッサンス建築の一分枝に位置づけられ、手本となったテューダー建築とそれに続くジェームズ朝の建築を源流とする。同時代のゴシック・リヴァイヴァルと語彙の一部を共有しながら、より世俗的で邸宅に向いた様式として、地主層のカントリー・ハウスや学校の建物に用いられた。19世紀後半から20世紀初めにかけては建設業者の定番の様式の一つとなり、カナダやアメリカ合衆国の大学建築や邸宅、インドのシムラーに建てられた副王の公邸など、英語圏と旧英領の各地にも広がった。
代表建築
Buildings