バチカン宮殿 Apostolic Palace
バチカン市国にあるローマ教皇の公邸。サン・ピエトロ大聖堂の北東に建ち、1589年に教皇シクストゥス5世がドメニコ・フォンターナに主要棟を建てさせた。ブラマンテ以来の増改築が重ねられ、システィーナ礼拝堂やラファエロの間を含む。
§1 — 概要概要
バチカン宮殿(Palazzo Apostolico、使徒宮殿)は、ローマ教皇の公式公邸であり、バチカン市国に建つ広大な建築群である。サン・ピエトロ大聖堂の北東に位置し、システィーナ礼拝堂やラファエロの間など、複数の建物と中庭が連なって構成される。教皇の居住・執務の場であると同時に、世界有数の美術コレクションを擁する文化複合体でもある。
歴史
教皇の居所はもともとラテラノ宮殿にあったが、アヴィニョン捕囚を経てバチカンへ移った。1447年、ニコラウス5世が古い要塞的な宮殿を解体して現在の宮殿の基礎を築き、以後ルネサンスからバロックにかけて主要な芸術家たちによる増改築が重ねられた。とりわけドナト・ブラマンテはベルヴェデーレの中庭やロッジアを設計して複合体全体の骨格を形づくった。1589年には教皇シクストゥス5世が、建築家ドメニコ・フォンターナの設計により教皇居室を含む主要棟(サン・ダマソの中庭)の工事を起こし、その後の教皇たちによって整えられていった。
建築的特徴
建築全体は単一の宮殿ではなく、サン・ダマソの中庭を中心とする居室棟を核として、礼拝堂・図書館・回廊が増築された集合体である。フォンターナの主棟ファサードは、パッラッツォ・ファルネーゼを手本とした古典主義的で抑制された表現を取り、規則的な窓配列と水平の蛇腹で統一される。中庭側には採光と動線を確保する開放的なロッジアがめぐらされている。内部はシスティーナ礼拝堂の天井画やラファエロの間の壁画といったルネサンス美術の傑作で覆われ、建築と美術が分かちがたく一体化している点が最大の特徴である。
意義・現在
バチカン宮殿は教皇権の中枢であり、絵画・彫刻・古文書を収める世界屈指の文化施設である。1984年にはバチカン市国全体がユネスコ世界遺産に登録された。なかでもシスティーナ礼拝堂は、教皇選挙(コンクラーヴェ)の舞台として宗教・政治・芸術が交差する場であり続けており、宮殿は今日もカトリック世界の精神的中心として機能している。
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