オーストリア国立図書館 Austrian National Library
ウィーンのホーフブルク宮殿に付属する旧帝室図書館。皇帝カール6世の命で1723年に着工した大広間(プルンクザール)は、フィッシャー・フォン・エルラッハ父子による盛期バロックの図書館建築の傑作である。
§1 — 概要概要
オーストリア国立図書館(Österreichische Nationalbibliothek)は、ウィーン中心部のホーフブルク宮殿に付属する図書館である。その起源はハプスブルク家の帝室図書館(Kaiserliche Hofbibliothek)にさかのぼり、文献上は1368年に記録される。建築として名高いのは18世紀前半に新築された大広間「プルンクザール(Prunksaal)」であり、ヨーロッパ・バロックを代表する図書館空間として知られる。
歴史
帝室図書館の蔵書は長く宮廷内に分散していたが、神聖ローマ皇帝カール6世は独立した壮大な書庫の建設を命じた。設計は宮廷建築家ヨハン・ベルンハルト・フィッシャー・フォン・エルラッハ(Johann Bernhard Fischer von Erlach)が担い、1723年に着工した。同年に父が没したため、工事と内部装飾は子のヨーゼフ・エマヌエル・フィッシャー・フォン・エルラッハが引き継ぎ、1726年に大広間の躯体が完成している。天井画は画家ダニエル・グランが手がけ、1730年ごろまでに仕上げられた。1920年、ハプスブルク帝政の終焉にともない、図書館は現在の「オーストリア国立図書館」へと改称された。
建築的特徴
プルンクザールは二層吹き抜けの長大なホールで、中央が楕円形のドームへ高く抜ける。壁面は木彫と金箔で縁取られた書架で埋め尽くされ、約20万点の蔵書が並ぶ。ドーム天井にはダニエル・グランによるフレスコが広がり、カール6世を学芸の守護者として寓意的に描く。ホールは蔵書目録に対応して「戦争」と「平和」の二つの主題に分けられ、壁画もこれに呼応する。列柱・彫像と遠近法的な天井表現が、書物の収蔵庫を一個の祝祭空間へと高めている。図書館を権力と学識の記念碑として構想する発想は、盛期バロック建築の典型といえる。
意義・現在
プルンクザールは、書物の保管という実用機能をバロックの劇場的空間へと昇華させた点で建築史的に重要である。現在もオーストリア国立図書館の中核施設として保存され、貴重書や歴史的内装を公開する一般見学が行われている。図書館を含むウィーン旧市街は2001年に「ウィーン歴史地区」としてユネスコ世界遺産に登録されている。フィッシャー・フォン・エルラッハ父子の代表作の一つとして、彼らが手がけたカール教会などと並び評価される。