ワルシャワのワジェンキ公園、人工池の島に建つ離宮。17世紀末のバロックの浴場を母体に、18世紀後半に国王スタニスワフ・アウグストの夏の離宮として新古典主義様式へ改築された、ポーランド新古典主義建築の代表作である。
§1 — 概要概要・位置づけ
ワジェンキ宮殿(Pałac na Wyspie/水上宮殿)は、ポーランドの首都ワルシャワ南部に広がる広大なワジェンキ公園の人工池に浮かぶ島の上に建つ離宮である。17世紀末にバロックの浴場として築かれ、18世紀後半にポーランド最後の国王スタニスワフ・アウグスト・ポニャトフスキの夏の離宮として新古典主義様式に改築された。水面に端正な姿を映すことから「水上宮殿」とも呼ばれ、ポーランド新古典主義建築を代表する作例として知られる。
歴史
建物の母体は、1683年から1689年にかけてオランダ出身の建築家ティルマン・ファン・ガメレンが、大貴族スタニスワフ・ヘラクリウシュ・ルボミルスキのために設計したバロックの浴場であった。「ワジェンキ(=浴場)」という名はこの施設に由来する。1764年に即位したスタニスワフ・アウグスト王はこの一帯を買い取り、宮廷建築家ドメニコ・メルリーニとヨハン・クリスティアン・カムゼッツァーに命じて、1772年から1795年にかけて浴場を本格的な離宮へと拡張・改築させた。王はここを政治と芸術を語らう場とし、当時のヨーロッパで最も洗練された宮廷文化のひとつを育てた。第二次世界大戦末期の1944年、撤退するドイツ軍によって破壊が試みられたが焼失は免れ、戦後に修復されて往時の姿を取り戻している。
建築的特徴
左右対称の白い外観は、新古典主義が理想とした均整と明晰さをよく示す。池に面した南北のファサードにはコリント式の列柱や壁面のピラスターが配され、屋上の手すり壁には古代の神々や寓意像を表す彫像が並ぶ。内部は王の趣味を反映した華麗な装飾で飾られ、なかでも円形の広間(ロタンダ)、画家の作品で壁面を埋めた絵画室、バッカスを主題とする大広間などが名高い。浴場時代の地下空間を取り込みつつ、水と建築を一体に構成した点にこの宮殿独自の魅力がある。
意義・現在
ワジェンキ宮殿は、王の啓蒙的な文化政策のもとで育まれたポーランド新古典主義の到達点を示す建築である。周囲のワジェンキ公園には円形劇場や別邸群、庭園が点在し、宮殿はその中心として水と緑に溶け込む景観をなす。現在は博物館として一般に公開され、王が収集した美術品や歴史的内装を今に伝える。ワルシャワ市民にとって最も親しまれる文化遺産のひとつであり、ポーランドの登録記念物(不可動文化財)に指定されている。