マルタの首都バレッタの正面玄関。稜堡に穿たれた歴代五代目の市門で、レンゾ・ピアノの設計により2011年から2014年にかけて築かれた。石と鋼による簡素な構成で、要塞都市の厚みを露わにする。
§1 — 概要概要
シティ・ゲート(City Gate、マルタ語でBieb il-Belt=「街の門」)は、マルタの首都バレッタの主要な入口である。要塞都市バレッタの陸側正面、二つの稜堡に挟まれた城壁部(ポルタ・レアーレ・カーテン)に開かれた門で、そこから市街を貫く目抜き通りである共和国通りが始まる。現在の門はこの場所に建てられた五代目にあたり、イタリアの建築家レンゾ・ピアノの設計で2011年から2014年にかけて築かれた。
歴史
最初の門は1569年のポルタ・サン・ジョルジョで、その後ポルタ・レアーレと改称され、1633年に建て替えられた。これら初期の門はいずれも城壁の一部をなす防御的な門であった。1853年にはより大きな門に、1964年にはアルツィロ・ベルゴンツォによる合理主義様式の門に置き換えられた。この二十世紀の門が2011年に撤去され、ピアノの案による現在の門が2014年に完成した。門の建設は、隣接する国会議事堂や旧王立歌劇場跡に設けられた野外劇場を含む、バレッタ入口一帯の再整備計画の一環として進められた。
建築的特徴
ピアノの門は、装飾的な門扉を設けず、稜堡の壁面に二つの深い切れ込みを穿つことで通路を開くという構成をとる。開口を挟む壁は現地産の石灰岩で仕上げられ、そこに鋼の薄い刃のような要素が架けられて、橋や庇として機能する。歴史的な城壁の断面と厚みをあえて露出させ、要塞という場所の記憶を空間として体験させる意図が読み取れる。素材と幾何学を切り詰めた簡素な扱いは、周囲の歴史的市街と対比をなしつつ、その尺度とは調和を図るものである。
意義・現在
シティ・ゲートは、歴史的な要塞都市に現代建築をいかに挿入するかという問いに対する、注目すべき一つの解答である。旧来の門を復元するのではなく、場所の構造を読み解いて再構成する手法は、当初こそ賛否を呼んだものの、バレッタの新しい玄関として定着した。門をくぐって国会議事堂や歌劇場跡へと連なる一連の空間は、世界遺産都市バレッタの現在を象徴する場となっている。