フラットアイアンビルディング Flatiron Building
アメリカ・ニューヨークの三角形の摩天楼。1902年竣工。ダニエル・バーナムらが設計した初期の鉄骨造高層建築で、ボザール様式の外装をまとい、ニューヨークを象徴する建築として名高い。
§1 — 概要概要
フラットアイアン・ビルディング(Flatiron Building、旧称フラー・ビルディング)は、アメリカ・ニューヨーク市マンハッタンに建つ22階建ての超高層オフィスビルである。五番街とブロードウェイが交差して生まれた鋭い三角形の街区にぴたりと収まる独特の形状で知られ、その姿が当時の衣類用アイロン(flat iron)を思わせることからこの通称で呼ばれる。1902年の竣工以来、ニューヨークを象徴する建築の一つとして広く親しまれてきた。
歴史
ビルは建設会社フラー社の本社屋として計画され、1901年夏に着工、翌1902年10月に竣工・開業した。設計はシカゴの建築家ダニエル・バーナムの事務所が担い、実際の意匠は事務所で働いた設計者フレデリック・P・ディンケルベルグがまとめた。当初は「フラー・ビルディング」と称されたが、地元の人々が呼んだ「フラットアイアン」の名が定着した。三角形の不安定さから強風で倒壊するとの噂も流れたが杞憂に終わり、竣工後は急速に名所となった。
建築的特徴
構造は鋼鉄の骨組みによる鉄骨造で、地域の最大風圧の数倍に耐えるよう設計された。外装は古典的なオーダーになぞらえ、基壇・軸部・頂部の三層構成をとる。低層部は石灰岩、上層部は白い艶のあるテラコッタで覆われ、ルネサンス・リヴァイヴァルとボザールの語彙による豊かな装飾が全面を彩る。先端部の幅はわずか約2メートルにすぎず、船首のように尖った北端が街路を切り裂くように立ち上がる。鉄骨と古典主義意匠を融合させた、初期摩天楼の代表的な作例である。
意義・現在
フラットアイアン・ビルディングは、シカゴ派の合理的な鉄骨構造とボザールの古典的装飾を兼ね備えた、20世紀初頭アメリカの摩天楼建築を象徴する存在である。その印象的な姿は絵画や写真の主題として繰り返し取り上げられ、周辺一帯は「フラットアイアン地区」と呼ばれるようになった。1979年に国家歴史登録財に、1989年にはアメリカ国定歴史建造物に指定されている。近年はオフィスから住宅への用途転換が進められており、歴史的な外装を保存しつつ新たな用途での再生が図られている。