奈良市に立つ華厳宗の総本山。聖武天皇の発願により8世紀に造営され、大仏(盧舎那…
奈良県斑鳩、聖徳太子ゆかりの仏教寺院。607年の創建で、金堂・五重塔など西院伽藍は7世紀末〜8世紀初頭にさかのぼり、現存最古の木造建築群として知られる。日本で最初に登録された世界遺産でもある。
§1 — 概要法隆寺は、奈良県生駒郡斑鳩町に立つ仏教寺院である。飛鳥時代の607年、推古天皇と摂政・聖徳太子により、太子の父・用明天皇の遺志を継いで創建されたと伝わる。西院伽藍の金堂・五重塔・中門などは現存する世界最古級の木造建築であり、東アジアの木造寺院建築の祖型を今に伝える。1993年、近隣の法起寺とともに「法隆寺地域の仏教建造物」として登録された、日本で最初のユネスコ世界遺産でもある。
創建当初の伽藍(若草伽藍)は、『日本書紀』によれば670年に落雷で焼失したとされる。その後ほどなく再建が始まり、現在の西院伽藍は7世紀末から8世紀初頭、およそ711年ごろまでに整えられたと考えられている。現存建物が創建時のものか再建かをめぐっては長く論争があったが、若草伽藍の遺構が発掘されたことで、現在の建物は焼失後の再建とする見方が定着した。東院には8世紀前半、聖徳太子を偲んで八角円堂の夢殿が建てられた。以後も平安・鎌倉・江戸期に補修と増築が重ねられ、千三百年にわたって信仰と学問の場であり続けている。1949年には金堂修理中の火災で壁画を焼損し、これを機に1月26日が文化財防火デーと定められた。
建築は中国の仏教建築を範としつつ、日本で独自に消化された飛鳥様式を示す。柱・梁を組む軸組の上に、軒の重みを支える斗栱(組物)を載せ、深い軒を遠くまで持ち出す。柱はやや胴張り(エンタシス)を帯び、雲形にうねる雲斗・雲肘木が古様を伝える。五重塔は高さ約32メートル、中心を貫く心柱が塔全体を束ね、その最下部の用材は年輪年代調査により6世紀末に伐採されたと判明している。簡潔で力強い構成のなかに、木という素材を知り尽くした工人の手わざがうかがえる。
法隆寺は、仏教伝来まもない日本が大陸の建築を受け入れ、自らの様式へと育てていく出発点に立つ。石を永遠の素材とした西方の記念碑に対し、木を組み、傷めば取り替えて受け継ぐ東アジアの建築観を、現存最古の実例として体現している。今日も法相宗から独立した聖徳宗の本山として法灯を守り、数多くの国宝・重要文化財を伝える、日本建築史の起点というべき存在である。