サン=テティエンヌ大聖堂(リモージュ) Limoges Cathedral
フランス中部リモージュのローマ・カトリック大聖堂。1273年にゴシック様式で着工し、身廊の完成は1888年に及んだ。フランボワイヤン式の翼廊正面と、1534年のルネサンス様式のジュベ(内陣障壁)で知られる。
§1 — 概要概要
サン=テティエンヌ大聖堂(Cathédrale Saint-Étienne de Limoges)は、フランス中部オート=ヴィエンヌ県の県都リモージュにあるローマ・カトリックの司教座聖堂である。聖ステファノ(サン=テティエンヌ)に捧げられ、リモージュ司教の座が置かれる。1273年にゴシック様式で着工されながら、完成は1888年にまでずれ込んだ、600年以上にわたる長期事業の所産である。フランスの歴史的記念物に指定されている。
歴史
建設は1273年、それ以前のロマネスク聖堂に代えて始まった。当初の設計者は記録に残らないが、同時期にクレルモンやナルボンヌの大聖堂を手がけ、北フランスのレヨナン・ゴシックを南仏へ伝えたジャン・デシャンに帰す説が有力である。内陣から着工された工事は、資金難や戦乱でたびたび中断し、身廊は長く未完のまま残された。19世紀に入り、県建築家ヴァンサン=マリー・ブーレらが整備を引き継ぎ、未完の身廊を、独立して建っていた西側の鐘塔へと接続して、1888年にようやく全体が一つに結ばれた。1876年の工事中には、地下からカロリング朝期の古聖堂やローマ時代の遺構が発見されている。
建築的特徴
平面と骨格はレヨナン・ゴシックに基づき、尖頭アーチとリブ・ヴォールトによって高い身廊を架ける。最大の見どころは、翼廊の北側正面(ポルタイユ・サン=ジャン)に展開するフランボワイヤン式の装飾で、炎が揺らぐような繊細なトレーサリーが石の表面を覆う。鐘塔は下部にロマネスクの名残をとどめ、様式の重層を物語る。内部には1534年に造られたルネサンス様式の壮麗なジュベ(内陣障壁)が残り、ヘラクレスの功業を主題とするレリーフで飾られている。ロマネスク・ゴシック・ルネサンスの要素が一つの建物に同居する点が、この大聖堂を強く特徴づけている。
意義・現在
リモージュ大聖堂は、中世に始まり近代に閉じられた、ヨーロッパの大聖堂建設の息の長さを体現する建築である。長い中断を経てなお当初のゴシックの構想に沿って完成された点は、19世紀フランスにおける歴史的建造物への意識の高まりとも重なる。現在もリモージュ司教区の司教座聖堂として礼拝に用いられ、街のランドマークとして親しまれている。