ニューヨーク市のイースト川に架かり、マンハッタンとブルックリンを結ぶ吊橋。技師レオン・モワソイフがたわみ理論を本格的に適用し、1909年に開通した。
§1 — 概要概要
アメリカ合衆国ニューヨーク市のイースト川に架かり、ロウアー・マンハッタンのキャナル・ストリートとブルックリンのフラットブッシュ・アヴェニューを結ぶ吊橋である。全長は約2,089メートル、主径間は約451メートルを測る。イースト川に架かる三つの吊橋のうち、ブルックリン橋・ウィリアムズバーグ橋に次いで最後に完成した。設計は技師レオン・モワソイフによる。
歴史
計画は1898年に「第三橋」として提起され、1902年にマンハッタン橋と改称された。建設は1902年の橋脚ケーソン工事に始まり、塔の基礎が1904年、アンカレッジが1907年、主塔が1908年に完成し、1909年12月31日に車道が開通した。1912年に路面電車が、1915年には地下鉄が走り始めた。その後、上層の道路や軌道の増設が続いたが、地下鉄列車の偏った荷重によって橋桁がねじれる問題が生じ、1982年から2004年にかけて大規模な補修・改造が行われた。なお本橋は米国国家歴史登録財に登録され、ニューヨーク市指定ランドマークでもある。
建築的特徴
本橋はたわみ理論を本格的に適用した最初の吊橋として知られる。たわみ理論は、主塔から吊り下げられたケーブルと桁の系全体がしなることで荷重を分散すると捉える考え方で、これにより桁を軽量化できた。補剛桁には吊橋として初めてワーレントラスが用いられた。約110メートルの主塔二基の間に主径間が架かり、4本の主ケーブルと多数のハンガーが桁を支える。上下二層の床版は7車線の車道と4本の地下鉄軌道、歩道を担う。一方、両端の広場や、マンハッタン側の凱旋門と列柱は、ボザール様式を代表する設計事務所カレール・アンド・ヘイスティングスが意匠を担当し、装飾的な記念性を与えた。
意義・現在
軽量な補剛トラスとたわみ理論の採用は、20世紀前半の長大吊橋の設計に影響を与えた。技師による構造の合理と、建築家による古典的な意匠が一本の橋で共存している点も特徴である。現在も自動車・地下鉄・歩行者を運ぶ現役の橋として、ニューヨークの東西を結び続けている。