マリインスキー劇場 Mariinsky Theatre
ロシア・サンクトペテルブルクのオペラ・バレエの殿堂。1860年、アルベルト・カヴォスの設計で開場し、チャイコフスキーらの名作が初演された。劇団の起源は1783年にさかのぼり、ソ連時代はキーロフ劇場と呼ばれた。
§1 — 概要概要
マリインスキー劇場は、ロシア・サンクトペテルブルクの劇場広場に立つオペラ・バレエの劇場である。1860年に開場し、19世紀後半のロシアを代表する音楽劇場となった。チャイコフスキー、ムソルグスキー、リムスキー=コルサコフらの舞台作品がここで初演され、バレエではプティパの『眠れる森の美女』『くるみ割り人形』などが生まれた。ソ連時代にはキーロフ劇場と呼ばれ、その名はバレエ団・歌劇団の名として今も国外で知られる。
歴史
劇団そのものの起源は、1783年にエカチェリーナ2世が設けた帝室劇場にさかのぼり、当初はアントニオ・リナルディ設計のボリショイ・カーメンヌイ(大石造)劇場を本拠とした。現在の建物は、それとは別の経緯で生まれた。1849年にカヴォスが同じ広場に建てた馬術サーカス劇場が1859年に焼失し、皇帝アレクサンドル2世はカヴォスに石造での再建を命じた。完成した劇場は皇后マリア・アレクサンドロヴナにちなんで命名され、1860年にグリンカの歌劇『皇帝に捧げた命』で開場した。その後、1883〜96年にヴィクトル・シュレーテルが大規模な改修を行い、今日見られる客席が整えられた。
建築的特徴
外観は当時の折衷主義のもと、落ち着いた新古典主義を基調とし、内部装飾にはネオ・ビザンティンの華やかさが加えられている。客席は柱やドーム天井を排した馬蹄形の観客席で、平らな天井とともに優れた音響を生むよう設計された。中央には皇帝のためのボックス席が置かれ、青と金で統一された空間に、カヴォス自身が手がけた房飾りの大シャンデリアが下がる。プロセニアム越しに広がる舞台は、当時世界最大級の規模を誇った。
意義・現在
マリインスキー劇場は、イタリア・オペラに支配されていたロシアの舞台に、自国の作曲家による真にロシア的なレパートリーを根づかせる場となった。バレエではワガノワに連なる教育の伝統が、パヴロワやニジンスキー、ヌレエフ、バリシニコフら数々の名手を輩出した。2013年には近隣に第2劇場(マリインスキーII)が開場し、歴史的建物と新ホールが並び立つ。今日も世界有数のオペラ・バレエの拠点として活動を続けている。