カタールの首都ドーハ、湾に突き出す人工島に立つイスラム美術の専門館。イオ・ミン・ペイの設計で2008年に開館し、内部の展示空間はジャン=ミシェル・ヴィルモットが手がけた。
§1 — 概要概要
カタールの首都ドーハ、コーニッシュ沿いの湾に突き出す人工島に立つ美術館。7世紀から20世紀に及ぶイスラム美術を、三大陸・千数百年の広がりにわたって収蔵・展示する。中国系アメリカ人建築家イオ・ミン・ペイ(I・M・ペイ)の設計による晩年の代表作で、内部のギャラリーはフランスの建築家ジャン=ミシェル・ヴィルモットが手がけた。
歴史
構想は1990年代末に始まり、当時の首長シェイク・ハマドの依頼を受けたペイは、すでに引退していたが90歳を超えてこの仕事を引き受けた。彼はイスラム世界各地を半年かけて巡り、建築の「本質」を探したという。コーニッシュ沿いの候補地をいずれも退け、将来の周囲の開発に視界を妨げられないよう、海上に独立した人工島を築くことを提案した。建設は2000年代半ばに進み、2008年に開館した。ペイは、かつてルーヴル美術館で協働したヴィルモットを推挙し、展示空間と展示計画を委ねた。
建築的特徴
クリーム色の石灰岩を主材とした建物は、角ばった量塊が上方へ向けて段状に後退し、砂漠の陽光のもとで刻々と表情を変える。ペイは、9世紀カイロのイブン・トゥールーン・モスクの泉亭の幾何学に着想を得たと語る。中央には五層分の高さをもつドーム状のアトリウムがそびえ、その頂部のオクルスに通じる開口が、面取りされたドームを介して光を内部へと導く。北面は高さ45メートルのガラスのカーテンウォールとなり、湾とドーハの新市街を一望する。内部のギャラリーは濃色の石材と木材で落ち着いた階調にまとめられ、ペイの幾何学的な「器」を展示空間として生かしている。
意義・現在
イスラム美術館は、湾岸地域の文化的台頭を象徴する建物であり、ペイが手がけた最後の主要なミュージアムとして、伝統的なイスラム建築の要素を現代の抽象的な造形へと昇華させた点で高く評価される。海に浮かぶ要塞のような佇まいは、ドーハの新しい文化的アイコンとなっている。2022年には中東で初めてカーボンニュートラル認証を受けた美術館となった。
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