国立国会図書館 National Diet Library
東京・永田町に建つ、日本で唯一の国立図書館。前川國男の事務所が設計競技で選ばれ、1961年に第一期、1968年に全館が竣工した。打ち放しコンクリートと四周をめぐるバルコニーの水平構成は、戦後日本のモダニズム建築を代表する。
§1 — 概要概要
国立国会図書館は、東京都千代田区永田町、国会議事堂の北隣に建つ、日本で唯一の国立図書館である。国会の立法活動を補佐するとともに、国内で刊行された出版物を網羅的に収める納本図書館としての役割を担う。ここで扱う東京本館は、戦後日本を代表する建築家・前川國男の事務所が手がけた建物で、中央に書庫を据えて外周を閲覧空間がめぐる機能的な構成と、打ち放しコンクリートによる端正な水平意匠で知られる。
歴史
図書館そのものは1948年(昭和23年)に国立国会図書館法に基づいて発足し、当初は赤坂離宮(現・迎賓館)を仮庁舎とした。永田町の本館庁舎は旧ドイツ大使館跡地を敷地として計画され、1953年(昭和28年)の設計競技で前川國男建築設計事務所の案が一等に選ばれた。実際の設計を担ったのは、事務所内のMID同人と呼ばれる設計集団――田中誠・大高正人ら18名――である。1961年(昭和36年)に第一期工事が完成して開館し、別々の歴史を歩んできた赤坂と上野の蔵書がここで一つに統合された。工事はその後も続き、開館から7年後の1968年(昭和43年)に全体が竣工する。蔵書の急増を受け、1986年(昭和61年)には北隣に新館が増築された。新館も前川の設計によるもので、深く掘り下げた地下書庫を備える。前川はその竣工の直後に世を去った。
建築的特徴
本館は、国会議事堂の量塊に配慮した地上6階・地下1階の事務棟と、中央にそびえる17層の書庫棟からなる。閉架式の書庫を建物の中心に置き、その外側を閲覧室などが取り囲む平面は、資料の保存と利用という図書館の二つの機能を明快に分けた合理的な解である。外観は鉄筋コンクリートの架構を打ち放しのまま見せ、各階を連続してめぐるバルコニーが深い陰影と強い水平線を生む。装飾を排しながら素材と構造に重みを与えるこの手法は、ル・コルビュジエに学んだ前川が戦後に深めた表現であった。
意義・現在
東京本館は、丹下健三の諸作と並んで、1960年代の日本がモダニズム建築を自らの語彙として獲得していく過程を示す作例である。設計競技を通じて若い設計者に表現の場が開かれた点でも、戦後建築史に位置づけられる。竣工から半世紀を経た現在も、本館は新館・関西館とともに国立国会図書館の中枢として機能し続けており、図書だけでおよそ1,200万点にのぼる蔵書を抱える。本館2階のカウンター上には、初代館長・金森徳次郎が揮毫した「真理がわれらを自由にする」の句が掲げられている。