クロンシュタット海軍大聖堂 Naval Cathedral in Kronstadt
サンクトペテルブルク近郊クロンシュタットに立つ、ロシア海軍の中央聖堂。ハギア・ソフィアを範としたネオ・ビザンティン様式で、建築家コシャコフが設計した。1903年起工、1913年成聖。
§1 — 概要概要
サンクトペテルブルク近郊、コトリン島の軍港都市クロンシュタットに立つ正教会の大聖堂。航海者の守護聖人である奇蹟者聖ニコラウスに捧げられ、職務に殉じたロシア海軍の将兵を記念する。ロシア帝国が建てた海軍聖堂の最後にして最大のもので、ネオ・ビザンティン様式の到達点とされ、クロンシュタットで最も高い建物でもある。
歴史
海軍聖堂の構想は19世紀半ばに遡るが、海から見えるランドマークとなる規模が求められて設計は難航した。最終的にネオ・ビザンティンの名手ヴァシーリー・コシャコフが起用され、皇帝ニコライ2世の承認を得る。1901年に錨広場で起工式が行われ、1903年には皇帝臨席のもとで壁が築かれて本格的な建設が始まった。1905年の革命的動乱を経ながらも1907年に構造が完成し、内装の仕上げを経て1913年6月に成聖された。ソ連時代の1929年に閉鎖されて文化施設や海軍博物館に転用された後、2000年代に大規模な修復が行われ、2013年に海軍の中央聖堂として復興した。
建築的特徴
平面と空間構成は、コンスタンティノープルのハギア・ソフィアを範とする。コシャコフは本来好んだ高く小さなドームではなく、直径約27メートルの幅広く扁平なドームを採り、ビザンティンの比例に倣った。十字に組まれた空間にこの大ドームが架かり、その荷重はペンデンティヴを介して四隅へと伝えられる。外壁は黒い花崗岩の基部に黄色い煉瓦とテラコッタを重ね、正面はモザイクのイコンやバラ窓、二つの鐘塔で飾られる。内部は大理石のイコノスタシスや、空と海を主題とした床のモザイクなど、海軍聖堂にふさわしい意匠で満たされる。細部にはアール・ヌーヴォーの感覚も巧みに織り込まれている。
意義・現在
クロンシュタット海軍大聖堂は、帝政末期のロシアにおける国家・信仰・海軍の結びつきを象徴する建物であり、ビザンティン復興の集大成として建築史に位置づけられる。ソ連期の荒廃を経て修復され、現在はロシア海軍の中央聖堂として典礼と記念の場を兼ねている。ロシアの連邦級文化遺産に指定されている。