ロシア中部ニジニ・ノヴゴロド、ヴォルガ川とオカ川の合流点ストレルカに立つサッカー競技場。2018年FIFAワールドカップに向け、gmpの基本案をもとにロシア側が実施設計・施工した。列柱の奥に白と青の膜を張った外装と、観客席全体を覆う大屋根を特徴とする。
§1 — 概要概要
ニジニ・ノヴゴロド・スタジアム(Nizhny Novgorod Stadium / Стадион «Нижний Новгород»)は、ロシア中部ニジニ・ノヴゴロド州の州都ニジニ・ノヴゴロドにあるサッカー専用スタジアムである。オカ川がヴォルガ川に注ぐ合流点の岬、ストレルカに位置し、オカ川をはさんでニジニ・ノヴゴロドのクレムリンと向き合う。2018年FIFAワールドカップの会場として新設され、収容人員は約4万5千人である。2025年7月からは命名権により「ソフコムバンク・アリーナ(Совкомбанк Арена)」の名で呼ばれている。
歴史
招致段階の計画では、スタジアムはヴォルガ川沿いのペチョールスキエ・ペスキ地区に、漕艇用運河に面したスポーツ地区の一部として置かれる予定だった。しかし新たな道路や橋を含む周辺整備の費用がかさむとして見直され、2011年の候補地の検討を経て、2012年にストレルカでの建設が決まった。敷地は連邦的価値をもつ建築記念物のアレクサンドル・ネフスキー大聖堂に接する歴史地区の縁にあり、川からも市の中心のクレムリンの丘からも大きく見渡される。
設計の基本案は、ドイツのフォン・ゲルカン・マルク・アンド・パートナーズ(gmp)が2014年にまとめた。ロシア側はこれを下敷きに実施設計を進め、施工まで独自に担った。発注者と総合設計者は連邦の国営企業スポルト・インジニリングで、2014年末に連邦スポーツ省がストロイトランスガスと工事契約を結んだ。契約額は約168億ルーブル、設計費を含む総額は約179億ルーブルである。
工事は2015年に始まり、同年中に杭と基礎を施工し、2016年には各階の躯体と上段スタンドのコンクリート工事を終えて、屋根の鉄骨も半分以上が組み上がった。当初案の外装は、2015年の経済危機を受けた費用の見直しで大幅に簡素化され、現在の膜材による外装に改められている。2018年3月23日に使用許可が下り、4月15日に最初の試合が行われた。大会では6月18日から7月6日にかけて、グループリーグ4試合と、決勝トーナメント1回戦・準々決勝の各1試合が開かれた。
建築的特徴
全体は、長方形のピッチ、楕円形のスタンド、円形の外形が同心状に重なる構成をとる。gmpがヴォルゴグラードでも用いた考え方で、スタンドの幾何学形状はgmpの設計がそのまま実施された。
建物の外周には細い柱を並べたコロネードがめぐり、その内側でケーブルに張られた白と青の不定形の膜パネルが外装をつくる。膜は目の粗いメッシュ材で、外からは波打つ模様として見え、スタンドの側からは軽く透けて見える。配色はヴォルガ地方の水と風を主題としたもので、地元クラブの色にも合わせてある。
屋根は観客席の全体を覆う。トラスを組んだ鋼構造で重量は1万トンを超え、表面は半透明のポリカーボネートで葺かれている。この屋根を、外周に並ぶ三角断面の柱と、その内側に隠れたもう一列の柱が支える。スタンドの下には5層の諸室が収まり、延床面積は約12万7500平方メートルに及ぶ。
意義・現在
ニジニ・ノヴゴロド・スタジアムは、2018年大会に向けてロシア各地に建てられた新スタジアム群のうち、ヴォルゴグラード、サマーラと並んで、gmpの原案をロシアの設計者が引き取って実現した例にあたる。原案の外装は経費削減で姿を変えたが、歴史地区の正面に巨大な円形の量塊を置くにあたり、水の主題と淡い配色で川辺の景観になじませようとした点に計画の性格が表れている。
大会後は地元のFCニジニ・ノヴゴロドの本拠地となり、2020年1月には所有が連邦からニジニ・ノヴゴロド州へ移った。ロシア・スーパーカップやロシア・カップ決勝の会場にも選ばれ、コンサートなどの催しにも使われている。