ノートルダム・ド・ラ・ガルド・バジリカ聖堂 Notre-Dame de la Garde
マルセイユの最高地に立つバジリカ聖堂。「ボンヌ・メール(良き母)」と慕われ、海を見守る黄金の聖母像で知られる。エスペランデュ設計のロマネスク=ビザンティン様式で、1853年から1864年にかけて築かれた。
§1 — 概要概要
ノートルダム・ド・ラ・ガルド・バジリカ聖堂(Basilique Notre-Dame de la Garde)は、フランス南部の港町マルセイユで最も高いガルドの丘に建つバジリカ聖堂である。海上からもよく見えるその姿から、古くより船乗りや市民に「ボンヌ・メール(良き母)」と慕われ、頂に立つ黄金の聖母像が街と海を見守っている。
歴史
丘の上には中世以来、巡礼の礼拝堂が営まれ、海の安全を祈る信仰の場であった。19世紀半ば、手狭となった礼拝堂に代えて壮大な聖堂を築く計画が、マルセイユ司教ウジェーヌ・ド・マズノ(Eugène de Mazenod)のもとで進められた。基本構想は建築家アンリ・ジャック・エスペランデュ(Henri-Jacques Espérandieu)の師にあたるアンリ・ヴォードワイエ(Henri Vaudoyer)が示し、これを20代の若さのエスペランデュが引き継いで実現した。プロテスタントであった彼が、カトリックの一大聖堂の設計を託された点は注目に値する。1853年に礎石が据えられ、1864年には未完成のまま聖別された。エスペランデュの没後はアンリ・レヴォワル(Henri Révoil)が内部装飾を引き継ぎ、聖堂はおよそ1897年に完成をみた。
建築的特徴
建築はロマネスクとビザンティンの要素を融合した歴史主義様式による。下部の堂(クリプト)はロマネスク風の重厚な石組みで、上部の聖堂は縞模様の石積みと金地のモザイクに覆われたビザンティン風の華やかな内部をもつ。本体に付属する高さ約41メートルの鐘塔の頂には、彫刻家ウジェーヌ・ルケーヌ(Eugène Lequesne)の原型による高さ約11メートルの聖母子像が立つ。像は金箔を施した銅板を電気鋳造(ガルヴァノプラスティ)で成形したもので、1870年に据えられた。堂内には、難を逃れた船乗りらが感謝のしるしに奉納した数々のエクス・ヴォートが掲げられ、信仰の歴史を物語っている。
意義・現在
ガルドの丘から街を見下ろすこの聖堂は、マルセイユの象徴として市民に深く根づいている。海を行き交う者の守り手という性格は今も変わらず、観光と信仰の双方で多くの人を集める。2001年から2008年にかけて大規模な修復が行われ、モザイクや聖母像の輝きがよみがえった。