パリ16区にある楕円形の競技場。1972年、ロジェ・タイイベールの設計で同地の三代目として完成した。外周を巡るプレストレスト・コンクリート製の片持ち構造が独特の輪郭を生み、現在はパリ・サンジェルマンの本拠地として知られる。
§1 — 概要概要
パルク・デ・プランス(Parc des Princes)は、パリ16区の南西端、ブローニュの森にほど近い場所に建つ楕円形の競技場である。1972年に開場した現在の建物は同地に築かれた三代目にあたり、フランスの建築家ロジェ・タイイベールが設計を主導した。外周をぐるりと巡るプレストレスト・コンクリート製の片持ち構造が独特の輪郭を描き、サッカーとラグビーの大舞台として、また1974年以降はパリ・サンジェルマン(PSG)の本拠地として知られる。
歴史
この地に最初の競技場が開いたのは1897年で、自転車競技用のトラックを備えた競輪場であった。1932年に二代目へと改築されたのち、1960年代に大規模な再建計画が動き出す。きっかけは、新設される環状道路(ブールヴァール・ペリフェリック)が旧競技場の敷地を横切ることになった点にあった。1967年、国は三代目の建設を承認してタイイベールに設計を委ね、同年7月に旧競技場の解体が始まる。新スタジアムは道路トンネルを地下に通しながら、試合を続けたまま三期に分けて築くという難工事となり、本格的な工事は1969年から進められた。1972年4月に竣工し、5月25日のフランス対ソ連戦で開場、6月4日にはクープ・ド・フランス決勝が催された。落成式はジョルジュ・ポンピドゥー大統領が執り行っている。
建築的特徴
スタジアムは長径約251メートル、短径約191メートルの楕円形をなす。設計の核心は、内部に柱を立てずに観客席と屋根を支える点にあった。25トン級の片持ち式門型フレーム約50基が外周を取り囲み、寸法の異なる13種類が組み合わされている。これらが空へ反り返る肋骨のような外観を生み、剥き出しのコンクリートと相まって前衛的な表情を与える。屋根には照明が組み込まれ、観客席を覆いつつ芝のピッチには日光を通す。どの座席もタッチラインから45メートル以内に収まり、屋根に照明を内蔵した競技場はヨーロッパで初であった。構造には7万7千立方メートルのコンクリートと7千トンの鋼材が投じられている。
意義・現在
開場以来、パルク・デ・プランスはフランス・サッカー史の中心的な舞台であり続けてきた。1998年にスタッド・ド・フランスが完成するまでは、サッカーとラグビーのフランス代表が本拠とし、欧州選手権やカップ戦の決勝を数多く迎えた。1974年からはPSGの本拠地となり、密閉された楕円形が生む反響の強さから「共鳴箱」とも称される独特の応援空間を育ててきた。2010年代には収容拡大と設備刷新の改修が施され、2024年のパリ五輪ではサッカー競技の決勝会場となった。半世紀を経た現在も、その肋骨状の輪郭はポルト・ドートゥイユ界隈の風景を特徴づけている。
関連する建築
Related※ フランスのパノラマの自由は非営利目的に限定される。設計者ロジェ・タイイベール(2019年没)の著作権は存続中であり、本画像(Wikimedia Commons、CC BY 3.0)の商用利用には留意が必要。