大統領官邸 Presidential Palace of Lithuania
ヴィルニュス旧市街に建つリトアニア大統領の官邸。14世紀の司教邸に起源をもち、現在のエンパイア様式の姿は1824年に始まるヴァシーリー・スターソフの改築に拠る。1997年から大統領府の所在地となっている。
§1 — 概要概要
リトアニア大統領官邸(Presidential Palace / Prezidentūra)は、首都ヴィルニュスの旧市街に建つ、リトアニア大統領の公邸兼執務の場である。14世紀以来の長い歴史をもつ建物で、幾度もの改築を経て、現在は端正な新古典主義の姿をとどめている。
歴史
官邸の起源は14世紀に遡る。リトアニア大公ヨガイラがヴィルニュス司教区に土地を寄進し、初代司教の下で司教邸として建てられたことから、しばしば「司教の宮殿」とも呼ばれる。その後、世代を重ねるごとに増築・改修が施され、ルネサンス期には建物と周囲の庭園が整えられた。18世紀には二度の大火に見舞われ、世紀末にはリトアニアの古典主義建築家ローリナス・グチェヴィシウスの手で再建された。1812年、ナポレオンとロシア皇帝アレクサンドル1世が相次いでこの館を宿所とし、ナポレオンはここで軍事行動を指揮したと伝わる。決定的な姿を与えたのは、1824年から1834年にかけてサンクトペテルブルクの建築家ヴァシーリー・スターソフが行ったエンパイア様式による改築であり、今日の建物はおおむねこの時の姿を伝える。1997年、官邸はリトアニア大統領の正式な所在地となった。
建築的特徴
現在の官邸は、スターソフによる後期新古典主義=エンパイア様式の作例である。簡潔で力強いオーダーの構成、抑制された装飾、中庭を囲む左右対称の翼屋が、帝政期の威厳ある官衙建築の趣を与えている。グチェヴィシウスによる古典主義的再建を下敷きとしつつ、より記念碑的な造形へと整えられた。
意義・現在
司教邸から皇帝や国王の宿所、帝政期の総督邸を経て、独立国リトアニアの大統領官邸へと役割を変えてきたこの建物は、ヴィルニュスの政治史そのものを体現している。旧市街の歴史的環境のなかにあって、国家の象徴的な場として現在も用いられている。