スモーリヌイ修道院 Smolny Convent
サンクトペテルブルク、ネヴァ川左岸に建つ修道院。ラストレッリ設計の青と白の大聖堂を中心とし、1748年に着工されたロシア・バロックの傑作だが、計画された巨大な鐘塔は未完に終わった。
§1 — 概要概要
スモーリヌイ修道院(Smolny Convent)は、サンクトペテルブルク、ネヴァ川左岸のラストレッリ広場に建つ、聖堂とそれを囲む建物群から成る修道院である。中心の大聖堂は、青と白を基調とする華麗な姿で知られ、イタリア出身の建築家バルトロメオ・ラストレッリの代表作の一つに数えられる。
歴史
修道院は、もともとピョートル大帝の娘エリザヴェータのために計画された。帝位を望めなかった彼女は修道女となることを選んだが、政変を経て自ら帝位に就くと、その庇護のもとで建設が続けられた。中心となる大聖堂は、ラストレッリの設計により1748年から1764年にかけて建てられた。計画された鐘塔は、完成すれば当時のロシアで最も高い建造物となるはずだったが、1762年のエリザヴェータの死により、その壮大な構想は実現を見なかった。続くエカチェリーナ2世がバロックを好まず、建設資金が尽きたため、ラストレッリは鐘塔も聖堂内部も仕上げられないまま手を引いた。内部がようやく完成したのは1835年、ヴァシーリー・スターソフが新古典主義の内装を加えてのことである。聖堂は1923年にソビエト当局によって閉鎖され、荒廃したのち1982年にコンサートホールとなり、2015年に正教会へ返還された。
建築的特徴
スモーリヌイ大聖堂は、エリザヴェータ様式とも呼ばれるロシア・バロックの精華である。中央の聖堂の四隅に小聖堂を配し、ロシア正教の伝統的な五つのドームの構成を、ヨーロッパ・バロックの量塊と装飾のうちに統合している。垂直性を強調した構えと、青地に白の柱形(ピラスター)が織りなす律動的なファサードは、ラストレッリの造形力をよく示す。スターソフによる内部は、外観の躍動とは対照的に、簡潔な新古典主義でまとめられている。
意義・現在
スモーリヌイ大聖堂は、サンクトペテルブルクのバロック建築の頂点の一つでありながら、未完の鐘塔という「もし完成していれば」を抱えた建築でもある。ロシアの連邦文化財に指定され、現在は日々の礼拝が営まれる現役の正教会堂として、ネヴァ川沿いの景観に屹立している。