聖ヘンリック大聖堂 St. Henry's Cathedral
フィンランドの首都ヘルシンキに建つカトリックの大聖堂。1858年から1860年にかけてネオ・ゴシック様式で建てられ、宗教改革後のフィンランドにおけるカトリック復帰を象徴する現存最古の聖堂である。
§1 — 概要概要
聖ヘンリック大聖堂(フィンランド語: Pyhän Henrikin katedraali、スウェーデン語: Sankt Henriks katedral)は、フィンランドの首都ヘルシンキのウッランリンナ地区に建つローマ・カトリックの聖堂である。フィンランドの守護聖人とされる聖ヘンリック(ウプサラのヘンリク)に捧げられ、現在はヘルシンキ・カトリック教区の司教座聖堂(カテドラル)となっている。規模は大きくないが、宗教改革以降のフィンランドにおけるカトリック信仰の再定着を示す建築として重要である。
歴史
宗教改革を経てフィンランドはルター派が主流となり、カトリックの公的な礼拝は長く絶えていた。19世紀、ロシア帝国の自治領(フィンランド大公国)となった同地には、軍人や移民を含むカトリック共同体が形成され、その礼拝の場として聖堂建設が計画された。設計はドイツ出身の建築家エルンスト・ロールマンが手がけ、1858年に着工、1860年に完成して祝別された。正式な献堂式が営まれたのは、それよりのちの1904年である。1920年、フィンランドが使徒座代理区となるのに伴い、当聖堂は司教座聖堂と定められた。外観は建設当時の姿をほぼ保ち、内部は1981年に改修されている。
建築的特徴
様式はネオ・ゴシック(ゴシック・リヴァイヴァル)で、赤煉瓦を主体とする簡潔な構成をとる。正面には尖頭アーチの開口と小尖塔が配され、外壁には聖ヘンリック、聖ペテロ、聖パウロの像が据えられている。内陣の祭壇には聖キプリアヌス、聖オラフ、聖ビルギッタの聖遺物が納められ、北欧の聖人崇敬とカトリックの普遍性を結ぶ意匠となっている。中世大聖堂のような飛梁や大規模なステンドグラスを欠く小聖堂だが、垂直性を強調した煉瓦造の輪郭に、19世紀リヴァイヴァルの様式意識がうかがえる。
意義・現在
聖ヘンリック大聖堂は、フィンランドに現存する最古のカトリック聖堂であり、北欧におけるカトリック共同体の歴史を物語る場である。プロテスタント圏の都市にあって少数派の信仰を可視化した建築として、その宗教史的な意味は規模を超えて大きい。今日もヘルシンキ・カトリック教区の中心的な聖堂として礼拝に用いられ、多言語の信徒共同体に開かれている。