ヘルシンキ大聖堂 Helsinki Cathedral
ヘルシンキの元老院広場に建つ福音ルター派の大聖堂。C・L・エンゲルが設計し1852年に完成した、白亜の新古典主義建築である。緑のドームとギリシア十字の平面で知られる、フィンランドを象徴する景観。
§1 — 概要概要
ヘルシンキ大聖堂(Helsingin tuomiokirkko)は、フィンランドの首都ヘルシンキの元老院広場に面して建つ福音ルター派の大聖堂である。白い壁面と緑青を帯びたドームが青空に映える姿は、首都を象徴する景観として知られる。ドイツ出身の建築家カール・ルードヴィッヒ・エンゲルが設計し、1830年から1852年にかけて建設された。完成当初は、当時フィンランド大公を兼ねたロシア皇帝ニコライ1世にちなみ「聖ニコライ教会」と呼ばれた。
歴史
19世紀初頭、フィンランドはスウェーデンからロシア帝国へと帰属を移し、自治大公国としてヘルシンキを新たな首都に定めた。エンゲルは新首都の中枢を一手に設計し、元老院広場を囲んで元老院庁舎・大学本館とともにこの大聖堂を配置した。1840年にエンゲルが世を去った後は、エルンスト・ロールマンが工事を引き継ぎ、当初案に四隅の小ドームを加え、屋根上に亜鉛製の十二使徒像を据えるなどの改変を施して、1852年に完成へと導いた。1917年のフィンランド独立を経て、現在の名称で親しまれている。
建築的特徴
平面は、等しい長さの四腕をもつギリシア十字を基本とし、その交差部に高い中央ドームが架かる。各正面にはコリント式の円柱が並ぶポルティコ(柱廊玄関)が張り出し、三角形のペディメント(破風)がこれを戴く。白で統一された外観は新古典主義の理念を体現し、広場の石段の頂に立つことで、都市景観のなかで際立った求心性を獲得している。中央ドームを囲む四つの小ドームは、ロシア正教会の五ドーム構成を想起させる要素でもある。
意義・現在
ヘルシンキ大聖堂は、19世紀前半の新古典主義都市計画が生んだ完成度の高い作品であり、エンゲルが描いた元老院広場の建築群の頂点に位置する。現在もフィンランド福音ルター派教会の重要な聖堂として礼拝に用いられるとともに、無数の人々が石段に集う首都の名所となっている。広場を中心とした古典主義の街並みは、北欧における新古典主義の到達点の一つとして高く評価されている。