クバー・モスク Quba Mosque
マディーナ郊外に立つ、イスラーム史上最初に建てられたとされるモスク。預言者ムハンマドが622年に礎を据えたと伝わり、現在の建物は20世紀後半にエジプトの建築家エル・ワキールが再建した。
§1 — 概要概要
クバー・モスク(Quba Mosque、アラビア語:مسجد قباء)は、サウジアラビアのマディーナ(メディナ)南西郊のクバー地区に立つモスクである。イスラームの伝承では、預言者ムハンマドが622年のヒジュラ(メッカからマディーナへの聖遷)の直後に礎を据えた、史上最初のモスクとされる。創建以来、幾度も改築・拡張を重ね、現在見られる建物は20世紀後半にエジプトの建築家アブドゥル・ワーヒド・エル・ワキール(Abdel-Wahed El-Wakil)の設計で再建されたものである。イスラーム建築の源流に位置づけられる、信仰上きわめて重要な聖地である。
歴史
伝承によれば、ムハンマドはマディーナ到着の途上でクバーに滞在し、自ら石を運んでこのモスクの建設に加わったという。以後、歴代のカリフや支配者によって繰り返し修復・拡張され、ミナレットやドームが加えられていった。建物は時代ごとに姿を変えており、創建当初の素朴な姿はとどめていない。1980年代、サウジアラビア政府によるマディーナ聖地整備事業の一環として、エル・ワキールの設計で大規模な再建が行われ、伝統的なイスラーム建築の語彙にもとづく現在の形が整えられた。さらに2010年代から2020年代にかけても拡張が続けられている。
建築的特徴
現在の建物は、白い壁面と複数のドーム、四本のミナレットを備え、中央に列柱で囲まれた中庭(サハン)を置く、伝統的なモスクの構成をとる。礼拝室の壁にはメッカの方角(キブラ)を示すミフラーブが穿たれる。設計者エル・ワキールは、20世紀のエジプトでハッサン・ファトヒーに学び、煉瓦やアーチ、ドームといった在来の構法と意匠を現代によみがえらせた建築家であり、クバー・モスクの再建にもその姿勢が貫かれている。歴史的な聖地に、伝統に根ざした建築言語で応えた点に特色がある。
意義・現在
クバー・モスクは、預言者の事績と直接結びつく聖地として、巡礼者や参詣者が絶えない。クルアーンにもその清浄さが言及されると伝えられ、ここで礼拝することには特別な徳があるとされる。創建の年は史上最初のモスクとしてイスラーム建築史の出発点に置かれる一方、現存する建物は現代の再建であり、千四百年にわたる信仰と造営の積み重ねが一つの場所に凝縮している。
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