ロスリン礼拝堂 Rosslyn Chapel, Roslin
スコットランド、ミッドロージアンの村ロスリンに建つ参事会礼拝堂。1446年にウィリアム・シンクレアが創建し、過剰なまでに密度の高い石彫で知られる後期ゴシックの異色作である。
§1 — 概要概要
ロスリン礼拝堂(聖マタイ参事会礼拝堂)は、スコットランド、ミッドロージアンの村ロスリンに建つ参事会教会である。壁から天井までを覆い尽くす緻密な石彫で名高く、構想された大規模な教会のうち、聖歌隊席(内陣)にあたる部分だけが建てられて残った断片でもある。
歴史
礼拝堂は1446年、スコト=ノルマン系の大貴族ウィリアム・シンクレア(初代ケイスネス伯)によって、シンクレア家のための祈りと荘厳な典礼を維持する参事会教会として創建された。着工は1456年の鍬入れにさかのぼり、内陣が築かれたが、1484年に創建者が没すると工事は止まり、当初構想された十字形の大教会は完成を見なかった。1560年の宗教改革ののち礼拝堂は長く放置され、1862年、ヴィクトリア女王の訪問を機に再奉献された。なお、近年は小説『ダ・ヴィンチ・コード』を通じてテンプル騎士団や聖杯との関わりが取り沙汰されてきたが、中世史の研究者はこうした俗説に根拠はないとしている。
建築的特徴
様式は後期ゴシックに属し、尖頭アーチとリブ・ヴォールトが空間を支える。だが本作を特異なものにしているのは構造ではなく、その装飾である。柱・梁・天井のあらゆる面に植物文、聖書の場面、楽士、そして「グリーンマン」と呼ばれる葉に囲まれた顔などが彫り込まれ、石が織物のように覆われている。なかでも螺旋状の彫刻で知られる「徒弟の柱(アプレンティス・ピラー)」は、棟梁と徒弟をめぐる伝説とともに語り継がれてきた。窓には繊細なトレーサリーがはめられる。
意義・現在
ロスリン礼拝堂は、スコットランドの最重要建造物としてカテゴリーA指定を受け、現在も私有のまま礼拝と公開が続けられている。密度の高い彫刻は風化との戦いを強いてきたが、保存事業によって維持され、その図像の解釈をめぐる議論は今日まで尽きない。